特別検察官ミュラーの調査、マネー・ロンダリングで悪名の高いキプロスの銀行に向かう。 2016年の大統領選挙をめぐるロシアの干渉、およびプーチンとトランプのきなくさい関係を調査しているミュラー・チームは、キプロスにあったFBME銀行― いまは閉鎖されている -の保有していたデータの提供を、キプロス中央銀行に要請している。 キプロスは、とりわけロシアのオルガルヒが巨額の資金を隠匿する場所として知られている。そしてオルガルヒは、いまではほとんどプーチンの部下的位置にいる人物である。 トランプ陣営にあって、選挙対策委員長であったマナフォートは、ウクライナの政権と深い関係にあり、彼はそこから巨額の報酬を得ていた。今秋に明らかになったフリンの場合は、トランプ陣営にとってもっと衝撃的なものであった。フリンは、ロシアやトルコなどとの情報コンサルタント的契約を結んでの活動を長年にわたって続けてきた、もとスパイ将校である。トルコとの関係では、エルドアンが最も適している宗教家 (アメリカ在住)を拉致・誘拐する案に乗り、成功すれば巨額の報酬を得る、という契約にまで至っていた。このフリンはトランプ政権の最高位のポスト(首席補佐官)に就いたのだが、おそらくこうした問題によるのであろう、1か月も経たずに辞任に追い込まれていた。フリンは6月頃にはミュラー・チームにより事実上の逮捕状況におかれていたが、それが公表されたのは秋も深まってからのことである。ロシアとの関係を最も深く知るフリンが、いわゆる司法取引に応じており、そのことでミュラー・チームはロシア疑惑に関係する重要な情報を握った、とされている。 キプロスにあったFBME(タンザニアに本店があったが、事実上の取引はキプロス)銀行は、ロシアのオルガルヒにより頻繁に利用されていた銀行である。このオルガルヒは、プーチンの息が深くかかった人物たちである(そうでないオルガルヒはすべていろいろなかたちで追放されてしまって、いまはロシアには存在していない。その最も有名なのはホドルコフスキーである)。 トランプ政権において、マナフォートやフリンのロシアとの関係の深さから、当然、キプロスでの金融的取引もミュラーの大きな関心になっているわけである。 トランプ政権の閣僚は、トランプの極端なプルートクラシーとネポティズムにより、黒い影をもつ人物で充満しているのだが、以下にあげるロスもその1人であるのみならず、この人物はキプロスの黒い金融と深く関与していた人物である。 *** 商務長官 (Secretary of Commerce) ウィルバー・ロス (Wilbur Ross) 衰退していく石炭・鉄鋼産業を集めて販売する動きをしてきた投資家。29億ドルを保有。つぶれかかったビジネスから利益を引き出す才覚のため、「禿鷹」とか「倒産王」と呼ばれる。 アメリカ製造業の衰退をなげく。アメリカ通商条約の批判者 90年代にトランプのタージ・マハール・カジノ (アトランティック・シティ) を助けたことがある。 ロスは、かつて、キプロスの最大の銀行の副頭取として活動していたが、この時の彼の活動は、プーチンの側近との濃厚な関係をもって行われていた。キプロスはEUのメンバー国であるが、抜け穴の多い国で、ロシアのオリガルヒは、ここを資金移動の抜け道として利用していることでよく知られている。ロスはここであやしげな取引 (巨額の資産を格安でロシア側の陣営に譲ったりしている)。ロスはこうした種類の取引で財をなしてきた人物として広く知られている)。 *** ミュラー・チームはもう1つの銀行からの情報提供を要求している。ドイツ最大の銀行ドイチェ・バンクであり、欧米のメガバンクで唯一トランプとの金融取引を続けてきた銀行である。ミュラーが要請しているのは、トランプとの金融取引の証拠資料である。 *** トランプは、6度も破産しているが、彼を助けたのが(あるいは助けることで何かを求めたのが)プーチン・ロシアである。トランプはプーチンの息のかかったオルガルヒから巨額の借り入れをしており、ニューヨークの不動産市場においてもこれらの資金がトランプ(そしてクシュナー)を大いに助けていることが知られている。 *** トランプは、ミュラーを解雇させたくて仕方がないのだが、この問題は、下手をすると、トランプの弾劾 (impeachment) に一気に向かう危険性を含んでいるようである。いわゆる司法妨害のもう1つの事例となる可能性が高い(もう1つはコミ―の解雇である)。 *** つい最近、例の「税制改悪」が成立し、トップ1%が巨額の減税を享受、他方、ミドル、低所得階層は増税になることが、ほとんどの調査機関からの報告で合致している。この結果、アメリカは巨額の財再赤字に陥ることが決定的になっている。共和党幹部は、きわめてトランプに迎合的、かつ巨額の資金提供者からの圧力に従って、えへら笑いをしながら、「トランプ減税」を祝福しているシーンがあり、「均衡財政」を標榜する共和党の理念は捨て去られてしまっている。 もう1つの問題が、1300万人もの人々が事実上のオバマケアの廃止状態に追い込まれることで、医療を受けることができなくなるという事態が発生するという問題である。トランプは国内の貧富格差を一層拡大させることで、今後、国内政治社会的混乱の拡大に大きな火を付けているのであるが、彼らはそのことにはいまのところ無関心で、大減税に酔いしれている。 対外的には、アメリカは、トランプの言う「アメリカを再び強国に」というスローガンとは裏腹に、きわめて弱い立場に自らを追い込んでしまっている。何よりもプーチン・ロシアに何も言えない状況(これはトランプがプーチンから巨額の資金を借りていることから来ているのであろう)に置かれており、プーチンは中東問題においても、イラン、トルコの首脳をよび、ソチで会談を行っているが、トランプはお呼びでない状況になっている。 中国は、自らの構想する世界戦略を続けるばかりであり、トランプはそれにたいして何も言えない状況に陥ってしまっている。 三極体制にすでに定着しているような世界の地政学的状況であり、トランプがアメリカをこの三極体制のなかで地位を保つとしても、相対的にその力は弱体化していくことは否めない。 EU、NATOとの関係は、トランプが自ら断つような姿勢を続けてきているし、またパレスティナ・イスラエル問題では、エルサレムをイスラエルの首都とする、という勝手な解釈を国連で行い、少数の弱小国をのぞけば全員それに反対する決議を行うという事態が起きている。 トランプ政権が味方につけているのは、中東ではサウジとイスラエルだけである。南米では、ホンジュラスあたりで、ベネズエラには経済制裁を行い、敵対活動を続けている。 パリ協定をめぐっても、トランプのみがそれを否定する立場をとっており、翻って、中国、ロシアはパリ協定に賛成の立場をとっている。つまりアメリカは極端な孤立主義をとっている(これはトランプ政権が国務省予算を極端に削減し、まともな外交交渉が不能状態に陥っていることとも符合している。なにせ、自らの国の諜報機関をフェイク扱いするフェイク大統領である。トランプがその代わり、巨額の軍事支出を行うという方針をとっている。これも孤立主義のコインの半面である)。 最も深刻な問題である北朝鮮問題においても、トランプはツィッターで相手を刺激するばかり(そしてアメリカ政界はそれを阻止することができていないという悲惨な状況。国務長官ティラーソンが和平交渉を目指すも、即座にツイッターで、「そんな無駄なことをするな」という有様である)で、幼児的というかナルシズム幼児性のかたまりのような人物である。 一刻も早くトランプは弾劾されて大統領職を退くのが世界にとって望ましいのであるが、共和党はもちろん、民主党も弾劾への運動は、存在してはいるものの指導部に至っては、非常に尻ごみしたスタンスを取り続けているのが現状である。 来年の世界にはどのようなことがわれわれを待ち受けているのであろうか。 だれにも分からないような不安定な状況下にわれわれはいる。 *** FBI investigates Russian-linked Cyprus bank accused of money laundering Request for financial information may be connected to inquiries into • Explainer: What is Trump’s history with Russia? Stephanie Kirchgaessner and Sara Farolfi Sun 24 Dec ‘17 10.01 • The FBI has asked officials in Cyprus for financial information about a defunct bank that was used by wealthy Russians with political connections and has been accused by the US government of money laundering, two sources have told the Guardian. The request for information about FBME Bank comes as Cyprus has emerged as a key area of interest for Robert Mueller, the US special counsel who is investigating a possible conspiracy between Donald Trump’s 2016 presidential campaign and the Kremlin. Trump-Russia investigation: the key questions answered Read more People familiar with the FBI request told the Guardian that federal investigators and the US Treasury approached the Central Bank of Cyprus in November seeking detailed information about FBME, which was shut down this year. One person familiar with the FBI request said it appeared to be connected to Mueller’s ongoing examination of Paul Manafort, the former Trump campaign manager who was indicted in October, and money that flowed between former Soviet states and the US through Cypriot banks. The Central Bank of Cyprus, which in 2014 placed FBME under administration in a direct response to US action and obtained full access to the bank’s data, declined to comment. The US special counsel’s office also declined to comment. FBME has vigorously denied accusations that it has been a conduit for money laundering and other criminal activity. The owners, Lebanese brothers Ayoub-Farid Saab and Fadi Michel Saab, issued a statement following a series of recent critical articles about the bank and denied all wrongdoing. Business Today: sign up for a morning shot of financial news Read more Bloomberg reported last week that FBME was the subject of two US investigations: one FBME, previously known as the Federal Bank of the Middle East, was based in Tanzania but about 90% of its banking The report found that the bank was evading efforts by the Central Bank of Cyprus to supervise its activities, and that FBME was facilitating money laundering, terrorist financing, transnational A 2014 internal report by the Central Bank of Cyprus about FBME that was obtained by the Guardian found that FBME had banking relationships with several Russians who were considered to be politically sensitive clients and that about half of the bank’s clients were Russian nationals, including Vladimir Smirnov, who is close to Putin, and Aleksandr Shishkin, a member of Putin’s political party. FBME was subjected in 2016 to what is known as a “fifth special measure”, a hard-hitting US regulatory tool that was established after the 9/11 attacks to address law enforcement concerns in the banking sector. The move prohibited the bank from doing business in the US or using US dollars, and barred US banks from opening or using any bank accounts on FBME’s behalf. In effect, it It is not clear why Mueller and his team of investigators appear to be interested in FBME’s financial data. But it indicates that the special counsel is continuing to examine money flows from Cyprus. A spokesman for FBME bank told the Guardian that Manafort was never a client of FBME. Mueller’s team has separately issued a subpoena for information from Deutsche Bank. According to a person close to the bank, the subpoena was issued in the autumn. The German bank is Trump’s biggest lender. |