2017年11月24日金曜日

(メモ) トランプ・アメリカ - 外部への影響力の劣化と内部分裂

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(メモ)

トランプ・アメリカ - 外部への影響力の劣化と内部分裂

トランプ政権の際立った特徴は、すべてはトランプの言動で決められている点である。
そしてそれは、異様なまでの自己顕示欲と密接に関連している。この超ナルシズムは、精神科医の学会から、「危険で大統領には適さない」宣言が、(本来、こうした行為は禁止されている)あえて発せられているほどである。
 彼は政策や理念といったこととは、ほぼ無縁の人間である。彼はまともに文章を理解する力がない。中学生以下であり、本を読んだことはほとんどない状態できている人物である。1ページの文書を読むのに、そしてその内容を理解するのに苦労する的状況である (が、トランプは、自分の知能指数はきわめて高い、とホラを吹き続けている。なにせ、大統領就任5日目で、ABCからのキャスターから「大統領職はいかがですか」と尋ねられて、すぐに話は「自分はリンカーンをのぞけば、歴史的にベストである」的発言をするほどの人物である。話のなかに、ウソ、もしくは、勝手に信じこんでいる、あるいは、自分の口から出る言葉は、以下に以前の話と矛盾するようなものであっても、「話したときに私の口から出た言葉はすべて正しい」とわけのわからん信念を強固にもち続けているのが、トランプの際立った特徴である。だから、彼が謝るということは、絶無なのである。

 閣議や、専門家から重要な情報やアドバイスを受ける、ということは、ほとんど行われていない。会議があってもそこで話されたことをトランプが理解している保証はまったくなく、翌朝早く、ツイッターで、「全世界」に向けて、神の声を発する(が、その内容は三文小説ばりの低俗な内容になっている。人をあざける言葉は日常茶飯事で、ヒラリーを呼ぶときは、つねに「クルキッド・ヒラリー」(ゆがんだヒラリー)である。彼女を、トランプがゴルフをしていてボールを直撃するビデオを公開で流すなどしており、その行動の異様性は群を抜いている、というか話にならない)のだが、それは会議などで話されていたことを反映させているわけではまったくない。本人が思うことを露骨な言葉で表現するばかりである。
 
 相手を馬鹿にするのは、敵にたいしてだけではない、というのがトランプの特徴である。自分の気に入らないことをすると、閣僚であっても容赦なく罵声を浴びせ続けている。司法長官セッションズにたいする執拗な攻撃はその典型である(が、セッションズは、辞めるつもりはない)。重要ポストについた人物で解雇された数は、史上最多である。
 そもそも、トランプは閣僚の発言を重視していない(自分の言うことを守っていればそれでいい、と考えている)。実際、財務長官が公の場で発言するシーンは、ほとんどないといってもいい(いまの財務長官はゴールドマン・サックス出身)。経済政策といったものは絶えて報じられたことはない。だれが担当しているのかも分からないほどの状況にある。
 外交政策はさらに顕著な異常さを見せている。本来なら国務長官の仕事であるが、ティラーソンは当初から重要任務からはずされてきており、何もできない状況が続いている。最も重要な業務を、娘婿のクシュナーに委任しており、しかもクシュナーは閣僚でもなんでもない、あらたに勝手に作られた職務である。中東問題の解決、中国との関係はクシュナーに委ねる、というのがこれまでトランプがとってきた方針である。そのため、国務省関連の重要ポストはかなりの数が空席のままなのである。これは、トランプが「アメリカをふたたび強く」と述べてきたことと大きく離反する行動である。アメリカはソフト・パワーを放棄してしまっているような有様である。

 覇権国アメリカという視点からみると、トランプは極端な孤立政策をとるとともに、覇権国の復活もしくは樹立を目論んで活動しているロシア、中国にたいし、きわめて「手玉にとられた状況に自らをおいており」、それをもってヨシとしている。なかでも、ロシア・プーチンにたいしては、態度的にも非常に卑屈にみえる対応をとっている。そして「プーチンに何度も尋ねたが、「選挙妨害工作はしていない」と繰り返し述べている。プーチンは、否定している。否定し続けている」としか述べていない。つまり、プーチンの言葉を信じればそれでいいのだ、と述べている。これは、トランプ陣営が、昨年、ロシア側と露骨な接触をトランプ・タワーで行うなどしていたことなどを指摘されると、「フェイク!」の一言で済ませ続けているのと軌を一にしている。
 プーチンの言葉を何の根拠もなく信じているトランプだが、一方、自国の諜報機関にたいしては、その調査をまったく無視し続けてきている、という奇妙な光景が展開されている。つまり、アメリカの大統領が、自らの諜報機関(CIA, FBI) を敵視し続けるという異様な状況が展開されている。CIA, FBIは、「ロシアによるアメリカ大統領選挙への妨害工作は行われてきた」と公式に表明しているにもかかわらず、そのトップたる大統領がそれらを「フェイク」で片づけているのである(もちろん、トランプ自身が被告席につくような立場におかれているのがこのロシア干渉なので、承認したくない、という気持ちが働くことはあるが・・・)。
 昨日、トランプは報道陣にたいし、「プーチン大統領と1時間半電話会談をした。シリアに平和を、という方針に賛成である」等などを話している。が、中東の今後の動向は、プーチン・ロシアとイランが牛耳る事態になってしまっており、アメリカが入る余地はきわめて少ないのが現状である。事実、プーチンはアサドやその他の首脳と、ソチで会談をもっており、トランプとの電話会談はその後のことで、トランプには椅子は用意されていないのが現状である。
 中国にたいしては、紫禁城への招待にいまだに浮かれ状態で、選挙公約の「中国製品に高率の関税を!」はすっかり脳裏から消えてしまっている。しかし、中国は、東シナ海での既得権益の拡張を着々と続けてきており、トランプはそれにたいして何も言えない状況におかれてしまっている。
 こうみてくると、外交的ネットワーク、さらに諜報活動はきわめて弱体化した状況におかれているうえ、台頭してきたプーチン・ロシア、習・中国の覇権国家的行動にたいしては、卑屈な姿勢で受諾することに満足している。EUとの関係がわけもなく冷え込んだままであり、メキシコやオーストラリアとも然りである。本来の友邦関係、同盟関係にあった諸国を自らの手で断ち切るような行動をトランプは取り続けてきており、ロシア、中国にとって、これほど動きやすい環境はない、と言える (日本に来る直前にハワイで、真珠湾攻撃の記念館を訪れ、日本に対する挑発的とも見える行動と発言を行っていたのも、トランプに特徴的な行動である)。

 覇権国家アメリカは、きわめて弱体化している。
トランプは、ソフト・パワーを弱体化させる半面、ハード・パワーとしての軍事費は激増させている。そして、自ら武器商人となって、サウジなどに軍事契約を取り付けることに熱心で、その都度、その成果を自慢しているほどである。
 トランプは自らの経済権益の拡大にはきわめて熱心であり、行く先々で、例えば、ゴルフ・コースの建設とか、自分のゴルフ・コースでのゴルフ・トーナメントの開催などを取りつけたりしている。
 こうした公私混同は、史上最大級の露骨な規模で行われてきている。娘婿やイヴァンカに重要な場に同席させ、ネポティズムは軍を抜いて露骨である。

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こうした人物が、アメリカの大統領になった、という事実は、彼の上記のような異常性だけでは片づけることができない問題である。大統領は、核攻撃指令のボタンをもつ存在である。北朝鮮の金を「ちっぽけなロケット・マン」とツイートする行動をとる人物である。先日、米軍のある将軍が、「違法な核指令に、私は応じない」的発言をしているが、トランプが大統領職にあるかぎり、こうした危険性はつねにつきまとっている。
 韓国での彼の演説は、3分の1は北朝鮮にたいする強硬措置の威嚇[核攻撃]であり、3分の1は、女子ゴルフ選手権を自分のゴルフ場で開催する話であった(残る3分の1は、にわか勉強の韓国史)。これ自体、もう異常、異様としか言えない演説である。

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 対外的には、きわめて稚拙、軟弱な行動しか取れないトランプであるが、これとは対照的に、対内的には非常に、人種差別的、そして共和党を撹乱に陥れる行動を取り続けてきている。彼はナチズム的シンパの立場をとっている。こうしたなか、共和党自体がモラル的に大きな危機に瀕している。支持母体からの圧力もあり、経済的利益の確保を優先して、トランプのとる政治モラル、価値理念の亀裂にたいし、あいまいな行動を取り続けているからである。
 
 いま、アメリカ政治が抱えている問題は次の点である。オバマケアのある事項にたいし大統領命令で州政府の保険会社への支払いをストップしており、これが発効すれば、きわめて多数の低所得階層が医療保険を受けることができない事態が発生する。
 議会では、「大幅減税」が重大な問題となっている。これは、何ら議会での審議が行われることなく、審議にかけられ、先日、下院を通過している。上院でどういう結果になるかが大いなる問題なわけであるが、これは、1%の超富豪にとっての減税であり、ミドル・クラス以下は増税負担を強いられるばかりである、というのが専門家の一致した見解である。
 もしこの減税案が通れば、莫大な政府収入減が到来する。それを補うために社会保障関連の支出を削減させることを同時に目論んでいる。
 上院は両党が拮抗しており、しかもトランプの政治モラルにたいする激しい批判が数名の共和党議員によって公表されている。52対49あたりなので、通過しない可能性も低くない。そしていま、アラバマ州で、ある共和党の人物が上院議員選挙に出馬しているが、その人物が14歳の少女にたいする行動問題が公にされ、アメリカはそれでもちきりになっている。

 アメリカは、社会的にはミドル・クラスの衰退が深刻な問題となっている。それに人種差別による亀裂が走り、若者は奨学金の多額の負債抱え込み問題に苦しんでいる云々。

 アメリカは、対外的に弱体化をみせているうえ、対内的に深刻な社会的亀裂に襲われている。そしてそれを是正する勢力がいまだ確たる勢力になりえていない状況が現出している。二大政党政治自体の危機的状況におかれている。
 これだけの事態を引き起こし、発する発言には必ず、複数のウソがあるフェイクの王であるトランプだが、トランプ信者(いわゆるベース)がトランプを依然として支持し続けている、というもう1つの現実がアメリカにはある。根は深いのである。

2017年11月23日木曜日

市民講座: さまよえる世界経済 ― 資本主義&グローバリゼーション       平井俊顕


これは、この数年、都内の大学学部および市民大学で行った講義をもとに、本の形式に整備するため、大幅な改訂を加えて本年の4月に出来上がったものです。全部で17講義からなっています。以前に、『ケインズは資本主義を救えるか - 危機に瀕する世界経済』(昭和堂、2012年)を刊行しましたが、領域的にも、問題意識的にも、それに続くものになります。

ここからダウンロードできます (PDFで489ページ)。


市民講座
   
平井俊顕(ひらいとしあき)


      
               <O.E. 出版>
市民講座: さまよえる世界経済

資本主義&グローバリゼーション
           
            主要目次
プロローグ
 
1篇 資本主義とグローバリゼーション

1  資本主義をどうとらえればよいのだろうか 
2  グローバリゼーションをどうとらえればよいのだろうか
3  金融の自由化と不安定性を見る 
4  リーマンショックとアメリカ経済 
5講 アメリカの金融政策
6  ユーロ危機、そしてEU危機 
7  アベノミクス、長期低迷の日本経済
8  経済学はどうなっているのだろうか
9  地政学的視座に立って見る
10 トランプ政権を見る

2篇 資本主義をどう見る

11  ケンブリッジは資本主義をどう見ていたのだろうか 
12  シュムペーターは資本主義をどう見ていたのだろうか 
13  ハイエクは資本主義をどう見ていたのだろうか 

3篇 ケインズの現在性
14  ケインズはどのようなことをした人なのだろうか 
15 『一般理論』てどのような本なのだろうか
16  国際通貨体制をめぐる攻防劇 
17  ケインズの「今日性」を問う


エピローグ


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プロローグ

私たちがいまこの地球上で生を営んでいる政治経済システムは資本主義と呼ばれている。(1) このシステムは、どのようなものとしてとらえられてきたのか、そして (2) いまある状況はどのようなものであるのか これがこの講義の主要なテーマである。
過去の知見を見ながら、しかしいま現在、世界で生じていることにより大きな焦点を置くことで、世界資本主義がいかなる方向に向
かおうとしているのか - こうしたことを、できるだけ分かりやすく述べていきたいと思っている。
 この30年は「グローバリゼーション」グローバルな規模での市場経済化現象 という言葉で要約することができた。だが、いまの地政学的変化は顕著で、アメリカ一国からロシア、中国の台頭により、そしてEUの統治機構としての崩壊とイスラム過激派の跋扈で、きわめて不透明不安定な状況に突入している。こうした点は時々刻々生じ、事態を変化させていく。この講義を通じ、それらについての理解をいささかでも深めていくことができれば、幸いである。

***

現在の世界経済は、この30年間に限定しても、じつにめまぐるしい変貌を遂げてきている。80年代の後半から社会主義圏の崩壊が始まり、1991年にはその指導国ソ連が崩壊し、ここに戦後世界を規定していた冷戦体制は終焉を迎えるに至った。
資本主義圏でも、経済的には日本や西ドイツの経済的発展がめざましく、アメリカはこれらの国に押されて、70年代に入ると国際通貨体制や貿易構造に大きな変化が生じていた。やがて80年代に至ると、スタグフレーションと双子の赤字に苦しむアメリカを尻目に日本の経済的躍進が際立つようになった。80年代後半は円高不況を克服しようとして遂行された日本企業の技術革新力が際立っていた。
だが、90年代に入ると、状況に大きな変化が訪れる。ITテクノロジーに基盤を置く情報通信産業、ならびに金融のグローバリゼーションを通じての金融部門が、アメリカで大きく開花したのに対し、日本はバブル対策の失敗から、さまざまな経済政策が実行されたにもかかわらず、以降現在に至るまで、いわゆる「失われた25年」に苦しみ、世界におけるそのプレゼンスを著しく喪失してしまうことになった。
崩壊したソ連圏諸国は、いわゆる「ショック療法」による急激な資本主義化を行い、大きな混乱と混迷に苦しむことになったが、一国、中国だけは「漸進的改革」路線のもと、着実な資本主義化に成功し、90年以降は年率10%を超える経済成長を達成し、いまではGDP2位の経済大国として世界経済に大きな影響力を与える国に変貌を遂げている。
そしてそれは中国だけではなく、いわゆるBRICsと呼ばれる「新興国」が急速な経済発展を遂げることで、世界の経済構造におけるプレゼンスを飛躍的に上昇させてきている。ロシアもプーチン時代になり、経済的にも、政治的にも大きな躍進存在感をみせることになった。
わずか30年のあいだに、世界経済は上記のような変貌を遂げてきた。
この変貌のなかで資本主義システムは90年代になると、不安定性を増大させてきていたが、それが爆発したのが2008年秋の「リーマンショック」であった。


***

本講は、主として2008年前後から現在に至る世界経済のさらなる変動を、アメリカ、EU、日本を対象に、実行されてきた経済政策や支配的になった経済理論にも配慮しながら、説明しようとするものである。だが、資本主義を理解するためには、経済学者がどのような資本主義観を展開してきたのかを参考意見として知ることも大切である。さらに、現在の世界経済の危機にさいし、改めて注目を浴びているケインズの理論思想などを知ることも有益である。さらに、もう1点不可欠だと思うのは、政治経済学的視座 (とりわけ地政学的視座) である。
これらを通じ、資本主義経済とは何なのか、資本主義はいずこへ向かおうとしているのかを追究すること、これが本講の主たる目的である。
 現在、アメリカ経済は他の先進国に比べるとかなりの好調を維持している。しかし、政治的には「唯一の超大国」という地位を、ネオコン」ブッシュによるイラク戦争という嘘で固めた理由での侵略とその結果生じた混乱、そしてそのことで拡大した「アラブの春」への対処ができないなか、喪失し、いまではロシア、中国が超大国として世界の政治経済システムに大きな地位を占める状況が現出している。
 さらに、アメリカは、トランプの勝利により、きわめて不安定な状況に突入しており、これからのアメリカ経済の行方にも不確実な要素がかなり強くなっている。
EUの状況はもっと深刻である。なによりも、EU圏は、リーマンショック後、長期に及ぶ不況に陥っている。とりわけユーロ危機の発生により、そしてそれに対処する政策的失敗により、経済回復の道筋がみえない状況に陥っているメンバー国が少なくない。それに追い打ちをかけたのが、2015年の中東からの膨大な難民の流入であり、この問題をめぐり、EU圏内ではほとんどのメンバー国において、極右政党が大きな影響力をもつ事態になっており、戦後のヨーロッパ統合を支えてきた中道右派中道左派政党の激しい沈下現象が生じている。
 世界経済の今後にとって大きな問題は、金融グローバリゼーションのもつ悪弊を規制する方策がきわめて不十分なままになってしまっていることであろう。アメリカでは、ドッド=フランク法が成立しているが、これもトランプ政権によって廃案にされる可能性が濃厚である (財務長官はゴールドマンサックスの元幹部)。まして他の国では、金融グローバリゼーションを抑制する方策は存在しないも同然なのである。
 こうしたなか、第2のリーマンショックの到来を否定することは非常に難しいのが現状である。そして最近、2つの国際機関 (OECDUNCTAD) から、そうした可能性が途上国の債務問題から発生する可能性を述べる報告書が出されたばかりである。リーマンショック後の先進国の金融機関が、量的緩和政策を利用して、巨額の貸し付けを途上国に対し行ったことのツケが、襲来しようとしている、という趣旨の報告である。
 世界経済は、依然として、海図のない大海を漂流している、というのが、偽らざるところである。

2017年11月20日月曜日

Univ. of Cassino and Southern Lazio Lectures, Italy April – June, 2016 World Capitalism in Crisis


Univ. of Cassino and Southern Lazio Lectures, Italy April – June, 2016 

   World Capitalism in Crisis 


                                 Guest Prof. Toshiaki Hirai





From April through June in 2016 I had the opportunity to deliver a series of lectures at the University of Cassino and Southern Lazio, Italy, and I prepared the files for them. Now, one year later, it has occurred to me that I might arrange and edit them in such a way as to produce a readable book, the table of contents which runs as follows. If you would be interested in it, you could download it from the following site:


https://drive.google.com/file/d/1dX3VITj9fiY_TqFxHFDxGU5MTdRZC2Dm/view?usp=sharing

(Completed in August, 2017. pp.464 in the form of PDF) 




Preface

Part I Global Capitalism and the Economies 

Lecture 1 How Should We Grasp Capitalism and    

              Globalization?


Lecture 2 Financial Liberalization and Instability


Lecture 3 Whither Capitalism (the Market Society)?


Lecture 4 The Euro Crisis


Lecture 5 Self-Trapped Japanese Economy 


Lecture 6 Quantitative Easing Policy in the US and    
              Japan

Lecture 7 What Is Happening to Economics?

Part II. What Keynes Achieved for the Modern 

             World 

Lecture 8 The Life of Keynes


Lecture 9 Keynes’s Economics in the Making


Lecture 10 Social Philosophy in Interwar Cambridge


Lecture 11 Employment Policy in the Making


Lecture 12 Welfare State in the Making


Lecture 13 Commodity Control Scheme


Lecture 14 Relief and Reconstruction Problem


Lecture 15 International Monetary System

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Author
Toshiaki Hirai  

Emeritus Professor, Sophia University, Tokyo
President of the Keynes Society Japan (2011- )

Graduated from the Faculty of Economics, University of Tokyo, 1971
Graduated from Doctoral Course of Economics, University of Tokyo, 1977.
Up until March 2012, Professor of Economics, Sophia University.

(While working as Lecturer of University of Kyoto, Lecturer of Tohoku University, Guest Professor of Hitotsubashi University, Guest Professor at University of Cassino and Southern Lazio [Italy] and so forth)

Editorial Board, History of Economic Ideas
Associate Editor, Journal of Post Keynesian Economics

Editor-in-Chief, Annals of the Society for the History of Economic Thought, October 1998-May 2001. 
Member of the Editorial Board (Japan) for the Collected Writings of John Maynard Keynes (1992-  )
Visiting Scholar, Faculty of Economics and Politics, Cambridge University (Oct.
    1987- March 1988)
Visiting Scholar, Institute of Historical Research, University of London (August     1997- September 1998)
Visiting Professor, University of Rome <La Sapienza>, October 2003 – March 2004.
Visiting Scholar, University of Toronto, May 2004-July 2004.
Member of the Council of the European Society for the History of Economic Thought (ESHEAT) April 2006- March 2010.
The Union of National Economic Associations in Japan (April 2009 - March 2011)
Guest Professor, University of Cassino and Sourthern Lazio, Italy(April – June  2017) 
MainBooks (confined to English books) 
Keynes’s Theoretical Development – from the Tract to the General Theory, Routledge, 2007.
  The Return to Keynes (co-edited by B. Bateman, T. Hirai and M.C. Marcuzzo), Harvard
University Press, 2010.
Keynesian Reflections (co-edited by T. Hirai, M.C. Marcuzzo and P. Mehrling), Oxford University Press, 2013.
Capitalism and the World Economy (edited by T. Hirai), Routledge, 2015.                     
    
Main Papers (confined to English papers)
 “The Turning Point in Keynes’s Theoretical Development”, History of Economic Ideas,
XII-2, 2004.
“How Did Keynes Transform His Theory from the Tract into the Treatise?”, European Journal of the History of Economic Thought, XIV-2, 2007.
“How, and For How Long, Did Keynes Maintain the Treatise Theory?”, Journal of the History
of Economic Thought,29-3, 2007. 
 “Exploring Hawtrey’s Social Philosophy through His Unpublished Book, Right Policy,z
Journal of the History of Economic Thought,34-2, 2012.
 “International Design and the British Empire”, History of Economics Review, 57 (Winter),
2013.
    




2017年11月16日木曜日

1946年3月9日、サヴァンナで行われた基金および世銀の理事の就任式で行ったケインズのスピーチ (眠れる森の美女)



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「その場合、生じうる最良のことは、双子は永遠の眠りについて二度と人類の法廷や市場に登場してこないことだ」

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1946年3月9日、サヴァンナで行われた基金および世銀の理事の就任式で行ったケインズのスピーチは、想像以上に皮肉を加えたものになっている。「眠れる森の美女」を引き合いに出しながら、ケインズの本音がオブラートされたかたちで表現されている大変意味深長なスピーチである。

  ひどくまずい命名になっています。双子の名前は逆にすべきであったという見解をずっと持ち続けると思います。

つまり、「基金」は本来は銀行と呼ばれるべきであったし、「銀行」は基金と呼ばれるべきであった、ということである。「国際通貨基金」は(例えば)「国際通貨銀行」、「国際復興開発銀行」は(例えば)「国際復興開発基金」と呼ばれるべきであったというような意味であろう。この論調は、ケインズが「共同声明」を絶賛していた1944年5月頃の発言 (本稿第1節を参照) と大きく異なっている。
 そしてこの命名に (魔法使いでなく) 妖精が現れて、双子に贈り物をもってくるだろう、という話になる。第1の妖精は豪華な衣服をプレゼントし、全世界のため、公共善につくすよう双子に願う。だが、清い言葉はこれまで守られたためしがなく、特定のグループの道具に化す危険性が高い。真に国際的な特性を維持するようにあらゆる努力がなされねばならない。
 第2の妖精はあらゆる種類のビタミン剤をもってくることであろう。双子は青ざめて虚弱な顔つきをしている。エネルギーと恐れを知らないスピリットが必要であり、それがビタミン剤である。
第3の妖精は、子供たちの唇に手を当てて封じ、そしてそれを再び開ける行為を施す。それにより知恵、忍耐、思慮深さのスピリットが呼び起こされることになる。
これらにより、双子は成長して偏見やエコひいきのない客観的で普遍的な対処をしていくことで、世界の信頼を勝ち得ることであろう。
 このように述べた後、ケインズは次のように釘を指している。悪意のある妖精がいないことを願う。だが、いた場合は、ひどい呪いの言葉を発することであろう。

 子どもたちは政治家として成長しなさい。すべての考えや行動は腹のうちに秘めなさい。決めたすべてのことはそれ自身やそのメリットのためにではなく、何か他のことのためになしなさい。

その場合、生じうる最良のことは、双子は永遠の眠りについて二度と人類の法廷や市場に登場してこないことだ、と。

Keynes ― Postwar World Planner, National Planner and Social Philosophy T.Hirai (Sophia Univ.)



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Keynes ― Postwar World Planner, National Planner and Social 
Philosophy 
  
                                                        T.Hirai (Sophia Univ.)

It should be composed of three Parts.


Part I of this planned book is composed of the following.


Ch.1 Commodity Control Scheme

Ch.2 Relief and Reconstruction Plan

Ch.3 Toward the International Monetary System

Ch.4 The Financial Negotiation with the US

Ch.5 Loan Negotiations

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Ch.6 Commercial Policy

Ch.7 Reparations Problem


Seven have been written, while the two have not as yet.