2018年3月31日土曜日

シュムペーター「価格システムの本性と必要性」(1934年)


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シュムペーター「価格システムの本性と必要性」(1934年)
 

1. シュムペーター特有のレトリックに富んだ小論である (私は、「シュムペーター・ツイスト」と呼ぶことにしている)。

一番の中心は、価格というものは、別に資本主義社会だけに特有のものではなく、その性質上、どの社会にあっても必要なものである、という点である。

2. 「価格 (+利潤) は資本主義社会における偶発的なできごと (incident) であり、現在の生産可能性の完全利用にとって障害になっており、それらはない方がよい」という近年みられる意見にたいしての彼のコメントが主題である。

3. シュムペーターはこの見解自体は誤りである、と考えている (と思う)。だがこう述べた後、彼はこの見解を支持する理論が、近年展開されてきたことを指摘する (これはチェンバレンの独占的競争理論を指している)。そのためかつては馬鹿げているとして経済学者によって一蹴されてきたもの ― そしてそれは市井の人がもっている見解であるが ― が、かなり大きな真実を有するものであることが判明してきたことが強調されている。シュムペーターは、依然としてその見解が蘇生したとはいえないものの、新たな理論の進展によってこの見解の正しさが相当示されるに至っている (何というレトリック!)、と述べる。経済学の初等教科書から、価格にたいするこうした見方を論駁することはできるが、それでもこの見解のもつ現実的含意には注目すべきものがある、というのである。

4. 価格というのは、あらゆる社会、経済行為一般につきものの現象である。それは経済選択の係数とみればよい。社会主義経済にあっても、何を、どのように生産するのかに関する決定は、― 中央当局が ― 同志にたいしてその量的選好を表明する機会を与えるしかない。

「もし、価格が選択係数と考えることができるならば、... 同志の選択係数は本質的に価格となるであろう。」

シュムペーターはさらに、マネージャーは生産手段の価値を帰属理論によって決定していく必要があることを指摘する。そしてこれらは資本主義社会での生産手段の価格と本質的に同じものである、という。

 「代替的生産のこれらの価値は、資本主義社会では、自ずから生産手段の貨幣価格で表されるが、他のいかなる形式の社会でも同等の表現で表されるであろう。」

 次の一文はこの小論の重要な箇所である。
 
 「それゆえ、ある経済的次元は、生産のガイダンスとしてつねに必要であり、この経済的次元はつねに、そしてすべての状況下において選択係数で表現されるが、これは基本的に、資本主義社会の価格と同じものである。」

つまり、価格というのはいかなる社会でも必要とされるものであり、同じ性質をもつものであるとの主張である。

5.完全競争についてのシュムペーターの見解

  完全競争は最大の厚生をもたらす: これは誤り (厚生経済学の第1命題の否定であろう)
  完全競争は最大の総生産をもたらす: これは正しい。

 このうえで、こうした競争は存在しないし、現在の大規模生産の時代には存在しないという事実によって、このことは損なわれる。

 完全競争によって証明されていることは、不完全競争のケースでは成り立たない。ここでチェンバレンが持ち出されている。

 こう述べながらも、シュムペーターは完全競争理論の有意義性を強調する。

  「しかしながら、純粋な意味での自由競争の理論の診断的価値は、これらの考察によって損なわれるものではない。それを考え抜くことのみならず、簡単な形式で公衆に提示することには依然として価値がある。というのは、それはトラブルの原因が存しない場所を示し、それゆえに、それはわれわれがそれらをどこに探すべきかを含意するからである。」

6. 最後に、シュムペーターは3点にまとめて示している。

(1)選択係数を価格に変えることで、その機能や性状は変わらない (ただし、この問題と信用創造が攪乱を支持するのかどうかという問題とは無関係 … 資本主義社会の信用創造問題についてのシュムペーターの見解をかいま見せている。つまり、資本主義経済を他の経済システムと識別する点として彼が強調する論点である)。
 
(2)競争均衡の安定性は、不完全競争には適用できない。乖離すればするほど不安定性と攪乱は増してくる。: この小論では、「経済発展の理論」はまったく姿をみせてこない。この観点は抑えられている。

(3)外部からの攪乱が、完全競争状態を極端に不安定なものに今日していることに注目を喚起している。とりわけ社会環境の雰囲気への着目: これは『資本主義・社会主義・民主主義』に関連する見解である。

「われわれは社会的環境 ― それから生じる特別の方策はまったく別にして ― の一般的特性に一瞥を与えることを忘れてはならない。資本主義社会が、ともに働く生活様式およびビジネス手法への一般的な敵対心により、数千もの微妙な方法で資本主義機構の効率性を損なう可能性のある社会的環境に、である。」

2018年3月30日金曜日

シュムペーター「資本主義」(1946年)

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シュムペーター「資本主義」(1946年)

   
1.資本主義

・シュムペーターは資本主義を、民間ビジネスマンの指導に委ねている社会と定義する。そして生産手段の私有化、利潤を目的とした生産、それに銀行信用組織を特徴とする社会ととらえている。

・シュムペーターはこうした社会はギリシア=ローマの昔から存在すると主張する。そして古代から現在まで、技術における相違はあるとしても、緩慢で連続した変形にすぎないとする。

・シュムペーターは、封建時代・中世にあっても活発に展開されていた国際金融的、国際貿易的活動に着目している。

・こうした見地から、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を徹底的に批判・否定している。

2. 重商主義資本主義

・資本主義過程の論理にとっては外生的であるできごと ― 南アメリカの銀・金の流入、および封建貴族がみせた自己利益のために新たな富を動かそうとする活力 ― が重要であった。

・2つの異なった社会的世界の共生は18・19世紀までのヨーロッパを理解するうえできわめて重要。

・重商主義時代を説明する2つの理論 ― (1) 勃興するビジネス・クラスが重商主義政策の牽引者であったとする理解 (これはマルクス的理解)、(2) ビジネス・クラスの役割は主人としての役割ではなく、召使いとしての役割であったとする理解。
シュムペーターは (2) の立場に立つ。そして資本主義は本性的に平和愛好的であり、経済ナショナリズムや政治的圧政という傾向は資本主義外 (extra-capitalist) 要因である、と主張する。

3. 完全 (intact) な資本主義
 
ナポレオン戦争後から19世紀末までの資本主義のこと。自由主義、自由放任、自由貿易、制限のない金貨。
  シュムペーターは、この時代が友好的・平和愛好的であった、と主張している。

・ビジネスマンに由来する合理主義、物質的進歩にたいする信頼、功利主義
・非資本主義的な支配者も、ビジネスマンの代理人 (agents) と化した。
・こうした発展は、どの時代よりも、純粋に経済的原因により説明ができる、とシュムペーターは述べる。

4.現代 (1898年以降)

・革新技術に支えられた経済の発展が1912年まで続く。
・大恐慌期も以前のものと基本的には変わらない、とシュムペーターはいう。
・しかし、資本主義にたいする態度の完全な逆転、自由主義時代のほとんどの傾向の逆転が生じたという。
・2つの理解 ― (1) 消滅する投資機会の理論 (A. ハンセン)、(2) 帝国主義理論
このいずれにたいしても、シュムペーターは否定的である。ただし、(2) について、3つの長所を指摘している。

5.資本主義の経済学

・資本主義過程は進化的である。静態的な資本主義は形容矛盾である。
・主役は新結合を遂行する企業者であることが強調される。
・要するに『経済発展の理論』の世界。

・ワルラス的完全競争理論のもつ意義についてまず述べる。
(シュムペーターは自らの「経済発展の理論」を述べるにさいし、必ず、circular flowに言及する。言及しないときはけっしてない。この点に注意が必要である。)
・だが、それは費用構造が変わらないといった条件が成り立つ場合にのみ有効なものであり、現実には大企業による技術の革新、大量生産のもつ経済性が重要である。シュムペーターはこの点に注目を寄せる。

6.資本主義社会の階級構造

まずは、マルクスの階級概念を持ち出す。そしてそれは分析目的にとっては価値がない、と批判する。

・いくつかの階級の協力、反目をみることが重要である、という。
・ 諸階級間のあいだの移動という事実が資本主義の社会構造の特質である、とシュムペーターは主張する。
・ビジネスにおける成功・失敗を通じての社会的成功 (失敗) はプラスの (マイナスの) 社会的選択を意味するのかいなかというもう1つの重要な問題 ― 労働者的環境からの企業的成功による社会的上昇は、超人的意思と知性に帰することができるが、そうでない場合は説明が難しい。

・「有閑階級」概念 (ヴェブレン) にたいする批判

7.搾取と不平等

・「資本主義は搾取を意味する」という発言にたいするシュムペーターの否定的コメント

・所得の不平等をめぐってのシュムペーターのコメント

8.失業と浪費

・失業は、今後は十分な生産により重要なものではなくなるであろう。

9.資本主義の将来

・診断と選好が入り交じった評価になっている。

・マルクスの分析にたいする評価。資本主義過程の分析から引き出された議論と、解答自身とを分ける必要がある。シュムペーターは前者を否定し、後者を継承する。

・『資本主義・社会主義・民主主義』的議論

・現在の傾向は社会主義に向かって進んでいる。

2018年3月28日水曜日

ミーゼス 社会主義国における経済計算, 1920年

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ミーゼス

社会主義国における経済計算, 1920年


1. ミーゼスは、社会主義経済を生産手段の国有化 (私的所有の廃止) された経済と規定する。そして、そのような経済では、生産手段の市場が存在しないため、経済計算は不可能である、と主張する。

2. ミーゼスは資本主義経済が貨幣的経済であることを、きわめて重視している。そして社会主義経済においては貨幣は本質的な役割を果たすことはできない、と考えている。

3.社会主義経済では、責任やイニシアチブを有する人々の存在する余地はない。

4. 「高次財のための自由に決定された貨幣価格という概念が放棄されるやいなや、合理的な生産は完全に不可能になる。生産手段の私的所有や、貨幣の使用から遠ざかるごとに合理的な経済状況からわれわれは遠ざかる。」

 「生産手段の私的所有、および貨幣による交換システムに基づく社会は、こ
うして計算と勘定が可能になる」 … こうしたことは社会主
義経済では得られない。

「(社会主義経済は) もはやいかなる信用も流通させない。というのは、社会
主義社会では、信用は必然的に不可能になるからである。」

「経済計算なくして経済はありえない。それゆえ、経済計算の追求が不可能
な社会主義国では、経済などまったくありえないのである。」

 「合理的であったことを決定する手段はないであろう。だから、生産が経済的考慮によって指令されることはけっしてありえないのは明白である。... 合理的な行為は、その適正な領域である場所から離れるであろう。実際、合理的な行為のようなもの、あるいは、いやまったく、合理性とか思考自身における論理のようなものはありうるのだろうか。」

 「民間企業の成功が依存している自由なイニシアティブと個人の責任の排除は、社会主義組織にとっての最も深刻な脅威となる」

5. 市場社会と社会主義の比較において、前者では参加者はすべて消費者として、および生産者として参加するのにたいし (経済計算にはこの両側面が不可欠であるとされる)、後者では生産者としての参加が欠落しており、したがって生産手段の価値評価を欠く。

 「同一企業の個々の支部のそれぞれの計算は、専ら、計算の基礎としてとられる市場価格はあらゆる種類の市場および雇用される労働のために形成されるという事実に依存している。自由な市場がない場合、価格メカニズムは存在しない。価格メカニズムが存在しなければ、経済計算は存在しないのである。」

6. 「財の客観的な交換価値が経済計算の単位として入ってくる交換経済」は、3つの利点を有するとされる。

 (1) それは、計算を、交易に参加するすべてのものの価値評価に基づくことを可能にする。

(2) それは、財の適切な用途へのコントロールを提供する。

(3) 交換価値による計算は、価値を単位にもどすことを可能にする。

7.このほか、労働価値説批判、そして社会主義者は純粋の社会主義になったときのもつ問題 (これがミーゼスの批判のポイントである) を看過、もしくはみようとしていないという批判がなされ、バウアーやレーニンの考えが批判的に検討されている。

 「これらのすべの著述物からの唯一の可能な結論は、それらが、社会主義社会における経済計算という大きな問題に気づいてすらいない、ということである。」

トランプの2つの沈黙 - ストーミー、プーチン

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トランプの2つの沈黙 - ストーミー、プーチン

アメリカの出来事を聞いていて、不思議に思うことが2つある。

1つは、ストーミー・ダニエルズのCNN 60分番組、およびその後の彼女の弁護士アヴェナッティ (イタリア系アメリカ人) のツイートなどにたいし、トランプが、異常なほど、沈黙を続けているという点である。これは弁護士の忠告に従っているといううわさがあるが、トランプはそんなことに頓着しないで、ツイートで相手を倍返しで口撃する習性がある。唯一のツイートは、以下のもので、何の意味もないものである。セックス・スキャンダルまみれの本人が、But through it all, our country is doing great! と、ツイートするのは、だれにもわけが分からないものである。 

Donald Trump did type out a vague “Fake News” tweet Monday morning, although it is unclear to what he was referring.
“So much Fake News,” Trump wrote. “Never been more voluminous or more inaccurate. But through it all, our country is doing great!”
いつまで沈黙を続けることができるのだろうか。だれしも関心をもつところである。

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もう1点は、アメリカがロシアにたいし、ようやく制裁措置に踏み切ったという点である。トランプは議会が制裁を要求しても、拒否し続けてきた。トランプは、プーチンにたいしては異常なほど屈従的姿勢を示し続けてきており、一言もプーチンにたいし批判的なことを発したことはない。
 そのトランプがロシアにたいする制裁に許可を与えた、ということである。大統領の認可なくしてそれは不可能なことである。
 ところが、トランプはこの決定に対しては、本人は何の発言もしないままできている。ロシアの行為を政府として論難しているが、それはトランプの会見やツイッターからではなく、側近の閣僚などからの公式発言によってである。
 トランプはいまでもプーチンについてはもちろん、ロシアが報復的制裁を言明しても、それにたいし何の発言もしないままである。この異常な状態、アメリカ政府は激しくロシアの行為を非難しているのに、そのトップはそのことについて何の発言もしないままできているという異常な状態が、温存されたままである。元CIA長官のブレナンのトランプ批判は非常に激しいものがあるのだが、彼いわく「個人的にか、トランプはプーチンに頭が上がらない something
をもっている」と。この見解は多くのコメンテーターによって共有されているものでもある(もちろんフォックス・ニュースは異なるが。最近、Alex Jonesはトランプ支持を辞める宣言をしている。熱烈なトランプ支持の放送をつづけてきていた人物である)。

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Trump stays silent on Twitter about Stormy Daniels affair allegations — so far
For now, it appears that the President is listening to his advisers’ warnings on the dangers of speaking out about women who have said they had affairs with Trump while he was married to Melania.
U.S. President Donald Trump waved to reporters as he returned to the White House on Sunday but ignored questions about whether he would watch Stormy Daniels' interview on 60 Minutes and the fate of Veterans Affairs Secretary David Shulkin. (The Associated Press)
By MICHAEL D. SHEARThe New York Times
MAGGIE HABERMAN
Tues., March 27, 2018
WASHINGTON—After 61 weeks in the White House, President Donald Trump has found two people he won’t attack on Twitter: Stormy Daniels and Karen McDougal.
The verbose commander in chief has posted more than 2,900 times on Twitter since taking office, using the term “FAKE NEWS” to describe everything from the Russia inquiry and allegations of chaos in the White House to harassment accusations, the size of his inaugural crowds and heated arguments with world leaders.
But he has been uncharacteristically silent in recent days — to the relief of his advisers — as a pornographic film star and a Playboy model described intimate details of sexual encounters with Trump. Stephanie Clifford, known in pornographic films as Stormy Daniels, said Sunday night on CBS’ 60 Minutes that she once spanked the president with a copy of Forbes magazine bearing his face on the cover.
The fact that the president has not given oxygen to the headlines, however, does not mean that he is content.
Inside the White House, Trump is eager to defend himself against allegations that he insists are false, those close to him say. And he is growing increasingly frustrated with breathless, wall-to-wall news media coverage of the salacious details from the two women.
On Monday, Clifford’s lawyer added new charges to the suit she filed: that the president’s lawyer defamed Clifford in denying her claims; that he and Trump pursued the deal to specifically help Trump’s election prospects; and that he then structured the agreement to shield from public view what was, effectively, an illegal $130,000 campaign gift.

Stephanie Clifford, known in pornographic films as Stormy Daniels, said Sunday night on CBS’ 60 Minutes that she once spanked the president with a copy of Forbes magazine bearing his face on the cover. (CBS NEWS/60 MINUTES / THE ASSOCIATED PRESS)
In discussions with allies and some aides, Trump has privately railed against Clifford, and insisted that she is not telling the truth. He has reminded advisers that he joined an effort to enforce financial penalties against Clifford, whose TV interview Sunday night was hyped throughout the weekend on the cable news channels that Trump watches obsessively.
But there has been no debate among Trump’s advisers about the best course for him: just keep quiet about a story that would only be fuelled by a presidential tweet or a comment about the women shouted above the roar of Marine One.
Keeping a lid on Trump is never easy, especially when he is eager to hit back at his adversaries.
In the days after an Access Hollywood video exposed his own lewd comments about women during the final month of the campaign, Trump responded by showing up at his debate with Hillary Clinton with three women who had accused Bill Clinton of sexual improprieties.
Five takeaways from Stormy Daniels’s ‘60 Minutes’ interview
Trump doesn’t believe Stormy Daniels’ claim she was threatened, White House says
Stormy Daniels says threats had kept her quiet about alleged affair with Trump
As a candidate, and as president, Trump has eagerly attacked just about all of his enemies and accusers, often with colourful nicknames like “Little Rocket Man” for the North Korean leader, “Crazy Joe Biden” or “Sloppy Steve” Bannon.
But for now, it appears that the president is listening to — and accepting — his advisers’ warnings on the dangers of speaking out about the women, much the way he followed the advice of his lawyers for a year not to attack Robert Mueller, the special counsel in the Russia inquiry.
Adult film star Stormy Daniels says an unidentified man threatened her to keep quiet about her alleged relationship with Donald Trump. Daniels also told CBS' "60 Minutes" she had one encounter of consensual sex with the future U.S. President. (The Associated Press)
Recently, he has ditched that advice, attacking Mueller and his team directly on Twitter. That leaves only his alleged mistresses and President Vladimir Putin of Russia as people who are immune to Trump’s Twitter trash-talk.
Raj Shah, a Deputy White House Press Secretary, declined to say “what the President may or may not have seen” on television Sunday night, though he said that Trump denies the allegations that Clifford made in the CBS interview.
“I’ll just say that he’s consistently denied these allegations,” Shah said. “The president doesn’t believe that any of the claims that Ms. Daniels made last night in the interview are accurate.”
Trump dined at his Mar-a-Lago estate in Florida on Saturday evening with Michael D. Cohen, his lawyer and longtime aide who is at the centre of the Clifford scandal, according to three people familiar with the get-together. The president scheduled the meeting himself, surprising his aides with it a short time before Cohen arrived, people familiar with the meeting said.
Melania Trump, too, has been silent about the allegations. Asked to react to the interviews, Stephanie Grisham, Melania Trump’s spokeswoman, said: “She’s focusing on being a mother, she’s quite enjoying her spring break and she’s focused on future projects.”
It is not clear whether Donald Trump watched a similar tell-all interview on CNN Thursday evening, when Karen McDougal, a former Playboy model, alleged a 10-month romantic affair with Trump in which they repeatedly had sex.
Sunday’s interview with Clifford contained few surprises but some humiliating details, such as Clifford saying she was not attracted to Trump, and her recollection of spanking him. Virility and strength are key traits that the president likes to project, and he once gloated about a New York Post headline quoting a friend of his second wife, Marla Maples, who recalled Maples saying that Trump was the “Best Sex I’ve Ever Had.”
In the interview, Clifford said that she had flirted with Trump in 2006 at a celebrity golf tournament in Lake Tahoe. She said Trump had compared her favourably to his daughter during the flirtation, and that she had intercourse with Trump.
She also alleged that an unknown person whom she believed to be connected to Trump and Cohen threatened her in a parking lot in 2011, telling her, “Leave Trump alone. Forget the story.” Then looking at her infant daughter, he added, “That’s a beautiful little girl. It would be a shame if something happened to her mom.”
Asked by Anderson Cooper whether she had anything to say to Trump, if he was watching Sunday night, Clifford said: “He knows I’m telling the truth.”
Even that has not prompted Trump to directly address the central allegations from Clifford and McDougal — that the president cheated on his wife shortly after Melania Trump gave birth to their son.
Donald Trump did type out a vague “Fake News” tweet Monday morning, although it is unclear to what he was referring.
“So much Fake News,” Trump wrote. “Never been more voluminous or more inaccurate. But through it all, our country is doing great!”
Beyond the details of their alleged encounters, Trump’s advisers have been urging the president to keep quiet about the legal wrangling concerning Clifford and McDougal.
McDougal, who accepted $150,000 from the parent company of the National Enquirer to keep quiet about her alleged affair with Trump, is suing the company to be released from the contract. Cohen has acknowledged paying Clifford $130,000 in the days before the 2016 election to keep quiet about her allegations.
Shah said at the White House on Monday that “I can say categorically that, obviously, the White House didn’t engage in any wrongdoing.”
Asked about why Trump’s lawyer would pay Clifford $130,000 if her allegations were false, Shah said that “false charges are settled out of court all the time.” He referred further questions about the case to Cohen.
The lawyer for Clifford has aggressively argued that his client is not bound by the nondisclosure agreement that she signed, in part because Trump himself never signed the document. Michael Avenatti, the lawyer, has repeatedly used Trumplike insinuations to suggest that Clifford has digital evidence of the intercourse.
“We have a litany of more evidence in this case, and it’s going to be disclosed, and it’s going to be laid bare for the American public,” Avenatti said in an interview Monday morning on ABC’s Good Morning America.
Last week, Avenatti tweeted a picture of a CD or DVD with the suggestive caption: “If a picture is worth a thousand words, how many words is this worth???? #60minutes #pleasedenyit #basta.”
Even that has not prompted a presidential retort — yet.
Read more about:
United States, Donald Trump

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Tough Action on Russia, at Last, but More Is Needed
By THE EDITORIAL BOARDMARCH 26, 2018

By expelling scores of Russians from the United States and 21 othercountries, President Trump and allied leaders have imposed the most significant punishment yet on Russia and its leader, Vladimir Putin. It’s a move that is well overdue for Mr. Trump, whose long refusal to criticize Mr. Putin and hesitancy to act against Russia’s malign behavior have raised suspicions that Moscow knows secrets it could use to blackmail the American president.
Monday’s development offers some hope that Mr. Trump may finally be forced to deal with the threat that Mr. Putin poses to the United States and its Western allies.
Put the emphasis there on “hope.” Mr. Trump will have to go even further to push back effectively against Mr. Putin’s mischief, which runs the gamut from interference in the elections in America and other Western democracies to propelling the wars in Ukraine and Syria.
The expulsion orders retaliate specifically for the poisoning of a former Russian spy, Sergei Skripal, and his daughter in Britain, for which the Kremlin has been blamed. On the American side, it includes 12 people identified as Russian intelligence officers at the United Nations in New York and 48 at the Russian Embassy in Washington. Also, the Russian consulate in Seattle will be closed because of concerns that Russians were spying on a nearby submarine base and Boeing manufacturing facilities.
Mr. Putin almost certainly will retaliate, continuing a downward spiral in Russian-American relations unheard-of since the Cold War. That will further disrupt the ability of the two nations to work on serious challenges, like ending the war in Syria and defusing a new nuclear arms race.

It appears to be getting more difficult for Mr. Trump to remain passive in the face of Russian aggression. On March 15, he imposed sanctions on a series of Russian organizations and individuals for interference in the 2016 presidential election and other “malicious cyberattacks.”

Yet, the president still panders to Mr. Putin, even as he intensifies criticism of the special counsel, Robert Mueller, and the former F.B.I. director’s investigation into Trump associates’ web of Russian ties.
The most recent example occurred last week when Mr. Trump, who has infrequent calls with the leaders of America’s closest allies, made a point of calling Mr. Putin to congratulate him on his recent fraudulent re-election. Missing from the call was any scolding for the nerve-gas attack on the Russian spy that prompted Monday’s expulsions or any demand that Mr. Putin stop meddling in American elections.
Even now, Mr. Trump is distancing himself from the expulsion order issued in his name, underscoring the incoherence in his approach. Rather than being introduced with powerful words from the president, the decision was announced in a White House statement saying the actions “make clear to Russia that its actions have consequences.”
The United States and its allies must stay united in condemning Mr. Putin’s nefarious activities and holding him to account. The expulsions show Russia will pay a price for using chemical weapons on allied territory.
But Mr. Trump has still not done much to counter Mr. Putin’s most dangerous initiative — meddling in the 2016 election and the coming November midterms. No, it will be impossible to see this administration as taking the threat seriously until Mr. Trump orders, at long last, a comprehensive campaign to repair weaknesses in the American electoral system and prevent tampering in future elections.
He should also sanction Russian oligarchs — freezing their assets, barring them from the global banking system, preventing their children from attending Western schools — ensuring that Mr. Putin’s cronies feel America’s reach and use their influence to stop his aggression.
Correction: March 27, 2018

An earlier version of this editorial referred incorrectly to a facility being closed in Seattle. It is the Russian, not American, consulate.
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A version of this editorial appears in print on March 27, 2018, on Page A20 of the New York edition with the headline: More Action Is Needed on Russia.

シュムペーター「資本主義の不安定性」(1928年)



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シュムペーター「資本主義の不安定性」(1928年)


1. シュムペーター独特のツイストがみられる論文である。要約していえば、資本主義はシステムとして、静態的条件下で安定的、動態的条件下で不安定 (ただし、それは新しい均衡への収束傾向を有する、とされる) である。
しかし、ここまでの話では、体制 (order) としては安定している。そのうえで、資本主義は体制としても社会学的理由により不安定になる (社会主義への移行)ことが、最後で言及されている。
換言すれば、資本主義の不安定性は、システムとしては動態的条件下においてみられ (ただし、それでも新たな均衡への収束傾向は認められ、体制としては安定している)、体制としては社会学的理由により生じる、とされる。
 
2. 資本主義システムは静態的条件下で安定的、動態的条件下で不安定的であると述べられている。

  1つは、静態的条件下での安定性である。これはワルラスの一般均衡理論などで代表されており (シュムペーターはいわゆるすべての新古典派経済学がこの点で同意している、と述べている。マーシャルも含めて、である)、そこでは均衡解の存在とその安定性が語られている (均衡解が多数存在する場合や、均衡解の不安定な場合への言及もあるが、それらは例外的なものである、とされる)。これは『理論経済学の本質と主要内容』の世界である。
 
もう1つは、動態的条件下での不安定性である。これはシュムペーターの『経済発展の理論』の世界である。この場合、システムは不安定的であるが、体制としてはこの場合でも安定的である、と語られている。
 
 3. 資本主義は、社会学的理由により体制 (order) が不安定になることが語られている。シュムペーターはここで、『資本主義・社会主義・民主主義』で論じられることになる考えをほのめかしている。

2018年3月27日火曜日

ナイト「社会科学と政治的トレンド」(1934年)



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ナイト「社会科学と政治的トレンド」(1934年)


1934年。それは2つの「ニュー・ディール」が脚光を浴びている時代である。1つはヒットラーのナチズム、もう1つはルーズベルトのニュー・ディールの時代である。ナイトは双方を本質的に同じものとみている。
今は、自分たちが育てられてきた文化価値が批判・否定されている時代である、とナイトはいう。知性 (intelligence) は疎んじられ、真実を追究する精神は否定され、考えるよりも行動だ、つべこべいうよりも実験だ、といった論調が支配的である、と。
ナイトは当初、この大不況はこれまでの不況と同じ性質のものだと思っていたが、いまではそれは誤りで、大きな経済的・政治的革命である、と確信するに至っている。そして、その到来をひどく批判的な思いで、ナイトはみている。
自由な市場システムと民主主義を当然視する時代は過ぎ去ってしまっている。過去にこれが成立したのは、ナイトによると、フロンティアの存在などの偶発的事象によるところが大きかった、という。

「現在という視点からみると、顕著に偶発的で本質的に一時的な条件のみが、一時的に、このような「自由な」社会システム - 経済生活における個人のイニシアティブと代表的組織を通じての政府 - が機能するようにみえる、もしくは自由と秩序を調和させるという問題を解決する能力をもっているようにみえることを可能にしたことが分かる。」 

自由社会にあっても、その制度の精神的な基礎は無意識的なものであり、感情的なものである。社会行動の多くは慣習であり、意識的なものの多くは、批判的思考ではなく感情と忠誠に基づいている、とナイトはいう。

ナイトは、ブルジョア社会の本当の崩壊はモラルである、という。

「リベラリズムの知的誤りは二重であった。それは、社会問題は、根底においては知的なものでなく道徳的なものであることを理解できなかった。そしてそれは、含有されている真に知的な要素を完全に誤解していた。」

ナイトの積極的な主張は、「真実を追究することを尊ぶことを意識して、今日の状況に立ち向かおう」というものである。そのためにはわれわれの精神構造をも意識的に変革することが必要である、と。

「共同的で批判的な真理追究という雰囲気」

「真の宗教的会話は、真実を愛し、真実への信頼を愛することに真に捧げようとするいかなるグループのメンバーのたいてい、もしくはすべてにとって必要であろう。」 

ナイトはプラグマティズムには批判的であった。

  「哲学においては、それは功利主義の時代であった。それは、アメリカでは19世紀の終わりごろ、プラグマティズム ― 哲学の否定、カルトへと変容を遂げた俗物根性 ― へと進展した。」

ストーミー・ダニエルズの60分

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ストーミー・ダニエルズの60分

CNNのアンダーソンの60分番組で、問題のストーミーの話が放映された。ポルノ映画界では広く知られた人物であり、39歳で子持ちである。
 トランプは、この放映を止めるために躍起となり、放映すれば、巨額の賠償訴訟を起こすと脅しをかけていた。それを振り切っての放映であった。
 会話は、かなり冷静に、しかし事実描写に徹しているという雰囲気があった。なにせポルノ女優であり、ネット上では表現に困る写真・ビデオが流れている人物である。そうした人物がいまなぜ赤裸々な告白を全国的に行うのかについては、賛否両論の意見が流れて入る。だが、対象となる人物がアメリカの大統領である。月とスッポン、と言いたいところだが、この大統領は真っ黒の履歴の持ち主であり、その意味でレベルの相違はない、というか人に迷惑をかけてきた、という意味ではトランプの方がはるかにそうである。
 このケースは、トランプの異性交流の醜さを、1年間関係をもったポルノ女優が直接、語ることで、これまでの多くの訴えが生じているトランプにたいし、大きな柱を提供したという点で大きな意義がある。この訴えに触発されて、3人の女性が公に登場してきて、かつインタヴューを受けて話をしたりしている。
 ストーミーの話のなかで、話題を引いたのは次の点である。ストーミーが2011年にトランプとの関係をある雑誌に売り、そこで洗いざらい話をしたことがある。その直後に、駐車場である男が近づいてきて恫喝を加えたという話である。後部座席には小さな娘が乗っており、「トランプのことを話したら、かわいそうに、ママはどうなるのかな」的脅しをしたとのことである。これは証拠が提示できているという話ではないので、今後どう展開するか分からないが、トランプ陣営がそうした恫喝を使うというのは、常套手段化しているから、本当の可能性が高いように思われる。
 一番重大な問題になるのが、2016年の大統領選挙直前に、ストーミーにたいし、トランプのお抱え弁護士が、NDA文書を作成し、それにサインをさせたという問題である。そしてこれにはトランプはサインをしていないが、ある額の口止め料が支払われることになっていた。この文書が公になったとき、弁護士は、「トランプは何も知らない、私の一存で、資金も私が不動産を担保に借り入れて用立てた」との発表を行った。これは常識ではもそうだが、あり得ない話である。弁護士が顧客の問題について顧客に何の話もせずに、勝手に契約書類を作成して、しかも資金を自分で用立てて、そして顧客からは1ドルも受け取っていない、などということが、せちがらいアメリカ社会でありえない話である。
 そして先日、CNNの放映をストップさせるために、放映したら巨額の賠償を請求するとの脅しをかけたのであるが、ここではトランプは明確に関与している、という奇妙な事態が生じている。弁護士の一存でできる話ではないからである。だが、契約書自体、トランプがサインをしていないから、正式な契約書になっていない。そしてストーミー側は口止め料を返還するという申し立てを行って、この番組の放映に至っている。
 もう1つの、そしてこれはかなり重要な問題になる可能性があるが、それは、この資金はトランプ陣営から出たとした場合 (それ以外にありえないが)、日本で言えば選挙法違反を問われることになる。金額が許容額を超えているのみならず、それを報告していないからである。トランプ陣営の資金問題という側面に入りこむ問題である。
 ストーミーの弁護士は、「今日の放映は始まりにすぎない。これからが勝負だ」と非常に強気の采配をふるっている。ツイッターで、CDやテープの写真をアップして、「何千の言葉よりも雄弁」的なツイートをしている。写真やテキストやメールが一杯あるということを匂わせている。そしてこれらはストーミーがもっている、となれば、それこそどのような写真が登場することになるのか、と誰しも思うところである。
 
[話が変わるが、トランプは1985年頃から、ロシアのオリガルヒ・マフィアとの金融
的つながりが強い行動をとってきており、オリガルヒはこの関係を利用してニューヨーのトランプ不動産に巨額の投資を行うことで、6度も倒産を経験しているトランプを大いに助けてきた、という長い歴史をもっている。オリガルヒはこれを利用してマネー・ロンダリングを続けてきているのである。トランプがタックス・リターンを一度も出したことがないのは、そのためであろう。]

2018年3月26日月曜日

(覚書) プラトン『国家』



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(覚書) プラトン『国家』


1. ソクラテスとその仲間のあいだの対話。生き生きとした会話体。ソクラテスの非常な論理力。仲間は (当初、例えばトラシュマコスのように、かなり反論する場面もあるが)、それに基本的には相槌を打つ役。

2. イデア (実相) 論はこの長い対話 (dialogue) のなかで2箇所に登場する。多くの寝椅子があるが、それにたいして (真実在) の寝椅子はただ1つのみ。それは不変である。それは見ることはできないが、思惟によりその存在を認識することができる。愛知者は、「それぞれのもの自体を ― 恒常普遍に同一のあり方を保つものを ― 獲得する人たち」 のことである。

3. 3種類の寝椅子。本性 (実在) 界にある寝椅子。大工の作品としての寝椅子。画家の作品としての寝椅子。プラトンは最後のものを、詩のなかで真似る機能をもつものとして否定した。この点で、ホメロスをかなり批判している。

4. プラトンの論理はすべてが論理的というわけではない。かなり無理のある論理も少なからずある。それは相手の相槌によって、読者にたいし、快くプラトンの話術に誘い込んでいく、という効果を有していることもしばしば見受けられる。

5. 哲学呈な対話・問答の重要性。「本曲」としての哲学的問答法。

6.プラトンは、国家を1人の状態から次第にいろいろな職種の人間を加えていくというかたちで増やしていく。そこでは一種の分業のようなことが当然視され、1人の人間は1つの職種に専念することが良い、というかたちで構想されていく。

7.プラトンは数について、その重要性を実在との関係で捉えている。それは、「実在の観想へと魂を向け変えて導いていくようなものに属する」。

8. それ以外にも、プラトンはかなりピタゴラス学派の影響を受けており、あやしげな議論を展開している。

9. 国家を5つのタイプ (理想国家、名誉支配制、寡頭制国家、民主制国家、僭主独裁制国家) にわけ、この順で悪くなってくる、と評価する。そしてそれに対応して、それぞれに対応する人間を同様のかたちで評価する。さらにその頭脳のなかを、魂の3区分 (学びを愛する部分、名誉を愛する部分、金銭を愛する部分) により説明している。プラトンは金銭を愛する部分を最も軽蔑的に見ている。
民主制国家がけっして評価が高くない点が面白い。衆愚政治ということに関連していると思われる。

10. 理想国家 は哲人王国家であり、そこでは共産制、女も共有、そして必要最低限のものしか受け取らないで生活する。さらにはそれらの種族を育てる教育のこと。体育と音楽 (ただし、感情を抑制したもののみ)の重視、数学の重視。激しい教育のなかからそれに耐え抜いた者を王に選ぶべし。 

(なぜ、英語では『国家』がRepublicと訳されるのだろうか。「哲人王国家」は共和制ではあるまいに。)

11. 最後に登場する「エルの物語」は、地獄と天国の輪廻転生のような観のする摩訶不思議な雰囲気の話である。

12.「善」のイデアの重要性と説明の難しさ。
13.「正義」とは何か。

主題とも言うべき上記2点についての説明は、皮肉なことに一番分かりにくい。善とは何か、正義とは何なのか。
 哲人王国家の実現されている状態が「正義」のようであり、そしてそれに対応した個人、そしてそれに対応した魂の状態が「正義」と言っているように思えるが。

14. 魂の不死

15. 面白いたとえ話。 洞窟につながれた囚人の話。後ろから光が射す。

2018年3月25日日曜日

迫るストーミー・ダニエルズのCNN放送 - ごろつき大統領との関係の洗いざらい暴露

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迫るストーミー・ダニエルズのCNN放送 - ごろつき大統領との関係の洗いざらい暴露

日曜にCNNの60分番組でポルノ女優ストーミーがトランプとの関係を洗いざらい話すことが大きな話題になっている (収録は2週間ほどまえに終わっている)。

下記の記事には、ストーミーというのが何者なのかが紹介されている。2010年の上院選挙で共和党からのある立候補者 (この候補者は売春婦問題に巻き込まれていた) にたいし、だれかがいたずらで「この候補者に対抗して出馬する候補者を募集する、ポルノ的な職業に就いている人を探している、選挙対策費用もこちらがもつ」的ポストを投稿した。が、これが現実化し、ついには候補者審査が行われた結果、ストーミーが選ばれるに至った。ストーミーは正真正銘のポルノ女優、言葉にはできないシーンがネット上に溢れているから、それを見ればどういう職業なのかすぐわかる。
選挙活動が始まると、ストーミーはすぐに人々の注目を集めるようになり、本来なら低調に進むはずの選挙がにわかに全国区的な注目を浴びるに至った。1つは彼女の職業、1つはものおじしない態度と言動によるものであった。この選挙活動だが、何者かが彼女の選挙マネージャーの車に火を付けるというような事件が生じ、彼女は途中で候補を降りている。当時の運動の関係者(全員が匿名を条件に話している)によれば、彼女は、何か前に出たい、注目を引きたい、という目的を明確にもって、この運動に参加していた、とのことである。そして頭脳は明晰で、ものおじをすることのない人物であった、と。

これが彼女の前歴である。そしていまトランプとの関係をあらいざらいぶちまけるというのが間もなく放映されるCNNのアンダーソンのショーである。前回と異なるのは、トランプとストーミーは10年ほどまえに、トランプと1年ほどの関係を続けていた、という点で直接的関係がある点である。
トランプはごろつきのような実業家であることは、彼の伝記作者が異口同音に語っている(ジョンストンが最も有名)ところである。女性問題も数知れないが、問題は、やばいものにたいしては、弁護士とつるんで恫喝や口封じを日常的に続けてきているという事実が判明している。
ストーミーの場合、2016年の夏頃、トランプの弁護士がストーミーとのあいだで契約書を交わした。関係を口外しないという条件で13万ドルの口封じ料を支払うというものであった。この契約書はすでにメディアで公開されているが、奇妙なのは、トランプはサインをしておらず、署名は (a.k.a.) になっている。
ストーミーが再び公の舞台に出てきて、トランプとの過去のことを洗いざらい話す、と
いうことになった。ストーミーは以前にトランプとの関係を何かのメディアでじつは洗いざらい話しているが、それにたいし口止めをしたのもトランプの弁護士である。そのため、
2011年に録音されたものは、いままでお蔵入りしていたとのことである。
 そしてCNNの話が出てきたとき、トランプ陣営は、この放送を行うと契約違反になるので、総額2000万ドルの裁判を起こす、と脅しをかけてきた。だが、この脅しに構うことなく明日、放送がなされることが決定している。ストーミー側の弁護士だが、きわめて雄弁で聡明である。話すことに無駄がなく、かつ冷静で、そして鋭い。
 例の契約書だが、トランプはサインをしていないのに、この契約書をたてに上記の裁判を実行しようというのだが、契約書は成立していないので、口止め料を返金して、自由に述べたいことを述べる権利を確立する、というのがストーミーの弁護士の主張である。そして同様の趣旨の契約書をもつ他の被害者を数名把握していることも、明らかにしている。
彼によれば、ストーミーへの肉体的な暴力の危険性はつねにあり、24時間警護が付いているという。
 この事件は、アメリカの暗い側面をいろいろなかたちで浮き彫りにしている。が何よりも重大なのは、この加害者がいまのアメリカ大統領であり、彼の異常な性格は、アメリカを、そして世界を大きな混乱に巻き込んでいる。一刻も早く、引きずりおろさないとかなり深刻な事態がわれわれを襲う危険性が高いのである (マックマスターを突如、解任し、
凶暴なジョン・ボルトンを後釜に据えることを決定した点がとくに危惧されている。マックマスターにはツィッターで、またボルトン自身は寝耳に水でこの話がころがりこんできている、というから、トランプの自我丸出しの行動がここでも出現している)。

 この事件は、大統領として問われているというよりも、個人として問われている面が強い。ある裁判で、このことは明確に明言されている。「大統領に免責の権利はない。個人としてこれに対面しなければならない」と。



Stormy Daniels: porn star primed to tell all about alleged Trump affair
The adult star who flirted with a Senate run goes public on Sunday night in an interview that could increase the pressure on the president
Lucia Graves in Washington
@lucia_graves
Sat 24 Mar 2018 05.00 GMTLast modified on Sat 24 Mar 2018 12.38 GMT
Stormy Daniels got her start in politics the same way most people get a used dresser – from a post on Craigslist.
“Seeking a female candidate to challenge David Vitter in the Republican primary for the United States Senate in 2010. We are looking for a candidate with a history in some aspect of the adult entertainment industry,” read the ad placed in 2008.
Vitter, the Republican senator from Louisiana who championed family values, had been ensnared in a prostitution scandal and some cheeky pranksters wanted to troll him on it.
But soon, what started as a gonzo prank idea was turning into something if not serious then at least real. “WE HAVE FOUND OUR PORN STAR,” read a follow-up post.
The porn star in question was Daniels, and in no time she was grabbing national headlines with her slogan that promised “Screwing People Honestly” – unlike her male opponent.
Trump offered me cash after sex, says former Playboy model Karen McDougal

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As wild as that was, that turned out to only be the prelude to Stormy Daniels’ main event. She currently faces a much more powerful male adversary, the president of the United States, as she prepares to go public on Sunday in a TV interview to give details about her alleged 2006 affair with Donald Trump.
The interview with Anderson Cooper, which is expected to break viewership records for CBS’s venerable 60 Minutes news magazine show, is easy to dismiss as frivolity. But her allegations, and the legal maneuvers Trump’s allies have employed to try to keep them quiet, could have implications spanning not just sex and sexual politics – but campaign finance laws and violence against women.
“You don’t know who become the pivotal players in history,” said Jonathan Tilove, who chronicled Daniels’ first steps in politics as a correspondent for the New Orleans Times-Picayune.
‘My daughter’s name is Stephanie, not Stormy’
Born Stephanie Gregory Clifford in Baton Rouge in 1979, Daniels grew up with her mother, who worked as a trucking company manager. Her dad was seldom around. As a girl she loved dancing and horses, but if her parents hoped she might pursue a childhood dream of becoming a vet, it was not to be. She left home and began stripping at 17; by 21 she was performing in adult films under the stage name Stormy Daniels.
She considers it her real name, but her mother, Sheila Gregory, can’t abide it.
“My daughter’s name is Stephanie, not Stormy,” she said when the Guardian reached her at home Tuesday. “Please forgive me if you think I’m being rude,” she added, before hanging up.
Gregory may not have made peace with her daughter’s career, but by any measure, Daniels is extremely successful at what she does, both in front of the camera and behind it. She started directing in her mid-20s, and won best new starlet at the 2004 AVN awards, referred to as the “the Oscars of porn”. The following year, she made a number of cameos in mainstream film, including Judd Apatow’s blockbuster hit The 40-Year-Old Virgin. (On social media, Apatow has said he admires her work.)

It was clear she was smart, prepared and comfortable with the media frenzy
Bradley Beychok on Stormy Daniels
In 2009, when her Louisiana campaign began, Daniels was living in Florida and not registered with either party. And as those who worked with her, most of whom did not want to speak on the record, quickly realized, she was not going to be a prop, but sensed opportunity. “She was smart enough to know that we weren’t trying to drag her through some college prank, that maybe this was an avenue to explore,” said a person with knowledge of the campaign.
Her platform, thin though it was, was socially liberal and fiscally conservative. But mainly it was about trolling Vitter, and she was a master provocateur. Asked if she was pro-life, for instance, she said she was “pro-condom”. Asked if she really just wanted to embarrass Vitter, she replied flatly: “I don’t see how I could possibly embarrass him more than he’s already embarrassed himself.”
Most notable though, was her ability to stay in the public eye, despite her never formally entering the race. “It was clear she was smart, prepared and comfortable with the media frenzy,” said Democratic operative Bradley Beychok, who met with Daniels during a “listening tour” in Baton Rouge.
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The Craigslist post turned what should have been a low-key election into a national spectacle, and Louisiana is just quirky enough of a place that national election forecaster Nate Silver didn’t rule her out. “She’s certainly not without her, um, charms,” Silver wrote at the time.
Daniels’ campaign would prove quite literally explosive. At the height of her political momentum, the Audi belonging to her political manager burst into flames, and though no one was ever apprehended, blurry surveillance footage showed someone loitering around the car and getting into it shortly before it detonated.
Soon after that, and amid a domestic violence arrest, Daniels opted out of the race. Vitter would go on to win, riding the wave of anti-Obama backlash in 2010. But when he ran for governor a few years later, his Democratic opponent won in an upset by reviving the prostitution scandal that Daniels had worked to highlight.
Target on her back
Today, as she prepares to take on the president, Daniels is – improbably, perhaps, at 39 – on top of her industry, with a confidence and acerbic Twitter profile to match.
Her second foray into politics began in February, when the Wall Street Journal reported that Trump’s longtime personal lawyer, Michael Cohen, had paid Daniels $130,000 to keep quiet about her story just before the 2016 election.
This image released by CBS News shows Stormy Daniels with Anderson Cooper. Photograph: AP
In response to the bombshell, the tabloid In Touch Weekly published an interview with Daniels it had been sitting on since 2011, kept under wraps due to legal threats from Trump’s circle. In the interview, Daniels describes in explicit detail a consensual, nearly year-long sexual alliance with Trump, allegedly begun weeks after his wife Melania gave birth to their son, Barron.
Sunday’s interview, however, will be the first time Daniels has spoken about the matter since Trump forged his own political career, and the first time she will address the efforts to muzzle her, which she has been fighting in court.
Details from Daniels’ account further shape the narratives that first emerged about Trump and his relationship with women during the 2016 election. More than a dozen women came forward to accuse Trump of sexual harassment and assault in the lead-up to the election. And while Daniels’ alleged affair with Trump was consensual, the context is nonetheless informative about how he views women.
The sexual misconduct allegations against Donald Trump – the full list

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And Daniels is not alone. Another adult film star, Jessica Drake, who accused Trump of trying to buy sex from her, claims she also has “confidential information” about Trump’s relationship with Daniels, according to a 2016 non-disclosure agreement or NDA.
On Tuesday, the former Playboy model Karen McDougal became the second woman this month to challenge Trump’s efforts to silence her, announcing she was suing the president to be released from a 2016 legal agreement that restricted her ability to speak about her alleged affair with the future president.
Separately, a judge this month ruled that a defamation suit brought by former Apprentice star Summer Zervos, who accused Trump of harassing her, may go forward, clearing the path for other sexual misconduct allegations against the president to be aired.
“It is settled that the president of the United States has no immunity and is ‘subject to the laws’ for purely private acts,” the judge declared, citing the precedent set by a lawsuit brought against Bill Clinton by his alleged mistress Paula Jones two decades ago.
Meanwhile, the president, who has denied all the claims brought against him, remains committed to keeping Daniels quiet.
Daniels’ legal team, in a clever bit of maneuvering, has offered to pay back every dollar she was paid in the NDA for the chance to speak freely. Her team claims the agreement is null and void because Trump never signed it, and they are moving ahead with the CBS interview despite a threat from Trump’s camp of up to $20m in damages.
Daniels now has a target on her back, and her lawyer has said she’s been physically threatened and is under 24-hour security. But her background in adult entertainment may give her a rare liberty other women Trump has tried to shame into silence do not possess. Namely, she is not easily embarrassed and she doesn’t care if people don’t like her.
“Slut and whore are words used by people who feel threatened,” she responded to a troll on Twitter who accused her of promiscuity. “I find power in them.”

2018年3月22日木曜日

アメリカの想像を超えた危機

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アメリカの想像を超えた危機

アメリカはいま想像を超えた危機に曝されている。

その筆頭はトランプという人物が大統領になったことである。
現在、彼をめぐっては3つの問題が彼を襲っている。

1. 特別検察官ミュラーによる、2016年の大統領選挙をめぐるロシアによる選挙干渉とそれとトランプ・チームが共謀した嫌疑をめぐる広範囲にわたる調査が、トランプ本丸にまで迫っているという事態である。
  いまトランプはこれにたいし、さまざまな妨害工作を行ってきたが、ついにミュラー自身への個人攻撃をツィッターで始めるに至った。トランプがミュラーを解雇する措置をとったとき、政界全体がそれにどう対応するかという問題である。大統領弾劾あるいは司法妨害という方向に向かうのかという点が、重大な争点となっている。いまの政党、とりわけ共和党が理念を放棄してトランプに追従している姿勢をとっていることが、最大の問題であるが、それに加えて、いまでもトランプがキャンペイン的アジ演説をすることに、ベースの人々が歓喜している姿が見られる点が、憂慮される点である。

2. ポルノ女優ストーミー・ダニエルズが、10年前に半年続いたトランプとの関係について洗いざらい話すことを決めたという問題である。争点は、2016年にトランプ陣営がストーミーにたいし、沈黙を守ることを条件に口止め料を支払い、その文面にサインさせたという点にある。これについて、トランプの弁護士は、「トランプは何も知らない、関知していない。私が自分の家を担保に支払い料を調達した」としらじらしいウソをついている。この同意書は公表されているが、トランプのサインはなく、かつそこに記されている名前は仮の名 (a.k.a.) になっている。こうした同意書を弁護士が勝手に書くなどということはど素人にもおかしい話であるが、これがトランプのフェイクの世界である。
 ストーミーはCNNの60分番組で洗いざらいを話すことにし、そしてその録音は終わっている。これにたいしトランプは、20億ドルの損害賠償裁判を起こす、と脅しをかけてきている。ストーミーの弁護士の論理と話しぶりは、予想していたのとは異なり、きわめて自信に満ちた落ち着きのある印象である。トランプ側はストーミーにたいし、絶えず脅しをかけ続けている。彼は本質的にThug である、とはトランプの伝記を書いているジャーナリストが異口同音に語っている (有名なのはジョンストン)。CNNの放送は3月25日に迫っている。ものすごい視聴率になることであろう。
  そうこうしているうちに、3名の女性が同様の問題で提訴に踏み切ろうとしていることが本日、報道されている。この裁判の行方は、トランプを終わらせる可能性もあると言われている。

3. つい最近生じたもう1つの問題、これはCambridge Analytica という会社が、フェイスブックを利用して膨大な個人データを取り出し、それをもとにしてトランプ側と契約し、自らの心理的ツールを利用して、膨大な選挙民の心理を分析し、それを覆すような操作をしていた(もちろんそれによって膨大な報酬を受け取るわけである)ということが、イギリスのメディアによって暴露され、またその内実がウィッスルブローアーにより赤裸々に語られるに至ったということである。この話はインターネットの今後のあり方に深刻な問題を提起するものになることは必至である。便利なアプリを個々人は個人的に利用し、そしていわゆるフレンドとの接触を増やす中で、膨大なネットワークが構築されるに至っている。それを悪用して、膨大な個人データを取り出し、そしてそれを分析アプリで解析し、個々人がどのような政治傾向をもっているのかなどを調べ、そしてそれを変える方向に運動を進める、ということが現実化しているという問題である。いまのところ、その第1号がトランプ陣営がこの会社に深くコミットしていたこと、これが新たに問題となっている。

トランプ政権は、いまや完全に崩壊状態になっている。自分の気に入らないものの首をきることを繰り返してきた結果、政権は実体をもたないものになってしまっている。いまではトランプが怒りに任せて決めたことはすべてそのまま大統領命令となり、それを少しでも抑止できる人物は姿を消してしまっている。トランプが頼りにしているのは、ツイッターにより、直接大衆に語りかけるという手段(その内容は嘘八百に満ちたものである。通常の世界では1つのウソでも名誉棄損になるようなウソだが、いまのアメリカではそれがまかり通っている。トランプのツイッターを禁止できないでいる)、および選挙演説中と同じ形式の独演会をとりまく人々の存在(これらの人々はすでに判断ができなくなっている)
、そしてその状況にたいし理念のかけらもなげうってしまっている共和党幹部、もう1つはトランプに膨大な資金を出している大金持ち(もちろん、出した資金の数倍の見返りを前提としてである)ということになる。

 トランプが孤立化しているということとともに、トランプ政権が内部分裂しているということも指摘すべき点である。その典型は、イギリスでの神経ガスによる元ロシア・スパイの暗殺未遂事件にたいし、トランプをのぞくトランプ閣僚は、ロシアの行動をかなり明確に批判し、イギリス側の支援を表明しているのだが、トランプは一切、何も表明していない。ましてツイッターで一言もしゃべっていない。さらに、今回のプーチンの大統領4選にたいし、トランプへのアドバイザーは、ブリーフィングにおいて、「No Congratulation!」
と勧告したのだが、トランプはそれを無視し、祝福のコールを出している。議会は、さらに「ロシアがアメリカのインフラ、たとえば電力発電所のオン・オフ機能をハッキングしており、いつでも電力をストップできる状態になっている」としてロシアを非難しているにもかかわらず、それらについてトランプは何も語らない、という状況になっている。プーチンからすれば、トランプのおかげで、アメリカは益々内部分裂を引き起こしているし、このままさらにもっといろいろと妨害工作、スパイ工作を進めることができる、というまことにめでたい状況が現出している。ここまでの卑屈な態度だが、これはモスクワでのミスユニバースのさいに、さまざまなかたちでハニー・トラップにからめとられたことに根源がある、とはよく言われていることである(実際に、数年前にこのことは、いわゆるゴールド・シャワーとして報道されている)。

2018年3月21日水曜日

石橋湛山考 平井俊顕(上智大学)

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石橋湛山考


平井俊顕(上智大学)
              
1. はじめに


日蓮宗僧侶の家に生まれた湛山 (1884-1973) だが、幼少時に他寺に預けられて生活している。早稲田で彼が学んだのは哲学であった。経済ジャーナリストの道に入ったのは、かなりの偶然が影響している。東洋経済新報社に入ったが、彼は経済記事を書くために入ったわけではなかった。社の事情でたまたまそうなる方向に運命づけられたのである。
 経済を自らで勉強し始めたのは28歳の頃で、まったくの独学であるというから驚く。おそらくそれ以前の哲学の勉強が彼の基本的なスタンスを決定づけていたのであろう、そのうえに経済、政治が眼前に突きつけられ、彼は現実をみる (日本経済・政治のみならず、世界の動向にも絶えず注意を払っている)と同時に、経済学書を読み続ける努力も怠らなかった。
 湛山の書き方で特徴的なのは、非常な自信をもって自論を展開していること、そして必ずといってよいほど、具体的な案を提示していること、であろう。
 湛山が尊敬していた人物は、早稲田時代の恩師 田中王堂である。プラグマティズムをアメリカで学んだ人で、日本での学歴はない。もう1人は、かのクラーク博士である (これは、甲府中学時代の恩師が札幌農学校で教えを受けた人でクラーク博士のことをよく話していたことからきているようである)。そして経済学においてはケインズからの影響が最も大きいと言ってよい。
 日本は、満州事変への対処を参謀本部が誤ったことで、関東軍の独走・暴走に足を引っ張られ、ついには中国大陸全土での侵略戦争を行う羽目に陥り、結局、自滅することになった。
 湛山がたんなる経済ジャーナリストでないのは、政治や軍部への批判を続けていたことに現れている。彼は自らを「自由主義者」と名乗っている。共産主義、社会主義にたいしては批判的であり、軍国主義にも批判的であった。湛山が日本の自滅の原因としてもう1点あげているのは、政党政治の貧困・矮小化である。

2. 経済評論

湛山は、歯切れよく日本の財政、金融、経済状況を分析している。あまり凝り固まったイデオロギーといったものとは無縁で、事実をかなり大胆に分析しながら、己の見解を相当な自信をもって語るという点が印象的である。いくつかの論点を見ていくことにしよう。

湛山は、金本位制にたいしては非常に批判的であり、「紙幣制度」 (=「統制通貨」)が今後の貨幣制度になっていくことに賛意を表明している。

「昭和6年12月の金本位停止、そして爾後我が国通貨制度は、この明治30年来引き続いて実施していたわが統制通貨制度から、金本位の形式を取り除き、その束縛を解いたものにすぎぬ。」

湛山は、公債の発行について、生産余剰が存在する不況下では、その発行は政府が日銀から受け取る貨幣を使用することで需要を喚起することになり、何の問題も引き起こすことはない、と述べている。公債の問題は、その国民経済の規模に依存している、というのが湛山の基本的スタンスである。
1929年から1936 年くらいまでは、大量の公債が発行され、生産余剰が存在する不況下であったから、日本経済は大いに成長を遂げることができた。そしてこれには金解禁が禁止され「紙幣制度」 (= 統制通貨) になったことで、為替レートが下がり、輸出が増大したことも寄与している。

湛山の経済政策論を見ることにしよう。湛山は、旧平価による金解禁反対、新平価での金解禁を一貫して唱えていた。当時、政府はイギリスと同様に、旧平価での金解禁 (金本位制) を遂行しようとして、1925-7年には、浜口・片岡蔵相により、1929年後半には井上蔵相により、デフレ政策が遂行され、そして1930年1月に、浜口内閣は旧平価での金本位復帰を実行するに至った。同時に一層のデフレ政策を伴いながら、である。
だが、折からのアメリカでの恐慌発生のあおりも受け、日本経済一層深刻な状況に陥った。そして1931年12月、浜口内閣は金解禁の停止を余儀なくされた。浜口内閣にとっては皮肉なことに、この後、為替相場の大幅な下落、および高橋是清蔵相下での財政支出の大幅な増大により、経済は大幅な改善をみせることになった。湛山はこれらの政策を「リフレーション政策」と名付けている。
この政策は2つの手段からなる - (i) 財政の膨張によって消費を起こすという手段、(ii) 金本位を停止し (変動相場にすることで) 円の為替相場を下げるという手段、である。(ii) がもたらす効果は、「日本の物価が海外からみて安くなる、即ち国際的にいままでの割高を訂正することができ」(国際収支の調節)ること、および「金利が下がること」である。
リフレーション政策とは、つねにこの2つの手段の総合として語られていることに注意が必要である。ケインズのLoan Expenditureと金本位制停止による為替相場の切り下げと言った議論もそのことを物語っている。だが、
いずれか1つを強調して語られているような雰囲気の表現がしばしば見受けられる。例えば以下のような表現である。

「リフレーション政策、即ち財政膨張策 …」
  
「… 昭和6年の金本位停止によってもたらされた為替下落はみごとにわが国内物価を騰貴せしめるとともに国際的にはこれを低下し、貿易を良化しリフレーション政策を成功せしめた。」

繰り返すと、2つの手段でリフレーション政策が語られていること、に留意することが肝要である。
ところで、この政策をインフレーションと言う言葉を用いるのは適切でなく、リフレーションという言葉が適切である理由を、湛山は次のように説明している (ここでも財政膨張策の影が薄くなった表現になっている感がある)。

「… それは過去のデフレーションによって安定を破られ、均衡を失った経済界に、その安定と均衡とを再び回復するに必要なる通貨の供給をし、物価の騰貴を図ったのでありますから、即ちそれはインフレーションでなくて、今日においてはリフレーションという言葉をもって表すのが当然の政策でありました。」

湛山の経済理論を見ることにしよう。そこで、重視されているのは、生産力が余っているか余っていないかという視点である。それに応じて、とられる経済政策は対照的なものとなる、というのが湛山の主要な考え方である。
次に示すものは湛山の経済理論の「基本命題」ともいうべきものであり、本質的にケインズの理論である。

 「財政支出は、いうまでもなく一種の消費または投資である。ゆえにこの財政支出と、財政以外の国民の消費および投資とを合計して、その総額が国民の生産力を超過せぬかぎり、増えてけっして悪い結果は生じない。いなもしその総額が国民の生産力を完全に働かすだけの量に達しないときは、ここに即ち生産過剰、操短、失業などを生じて、経済は不況に沈衰し、国民は困窮する。
   ゆえに右を財政の側面だけからいうと、財政支出は、財政以外の国民の消費および投資と合わせて、その総額が国民の生産力を完全に使用しつくす点まで、これを調節膨張せしめることが理想である。この点より以下に財政支出がしぼめば経済界は不況に陥り、またこの点以上にそれが増えればここにいわゆる悪性インフレを生ずる。」

そのため、1937年以降、湛山の主張は、それまでのリフレーション政策とはうって変わって次のようになる。

「… 現在わが国にとって最も必要な政策は、第1に為替相場を引き上げて物価の騰貴を抑え、第2に増税を断行し、第3に金利を引き下げ、もって日本の景気をいつまでも持続し生産力をさらに充実いたすことであります。」

いまでは、生産余剰がなくなっているから、公債の発行は好ましくなく、むしろ増税によるべし、というのが湛山の見解である。

 湛山をリフレーション論者としてのみ焦点を当てるのは、妥当性を欠く。彼は1931年前後はリフレーション論者であったが、1937年以降は反インフレーション論者である。湛山は上記の「基本命題」にしたがって経済の状況を判断しており、その結果、リフレーション論者 (これが最も政策論争の現場で有名なものであったのは確かであるが) にも反インフレ論者にもなっているのである。
 このことは次の湛山の言葉が、何よりも雄弁に物語っている。

「… とにかく、私が今頻りに増税を論じ、インフレに反対するのは、かつて不景気対策としてリフレーション政策を主張したその理論に忠実に依拠するものであることを考えてほしい。前に私と同様リフレーション政策を唱えた論者は、当然今日もまた私と同論でなければならぬはずである。さもなければそれらの人々は、前においていまだ真に理論に徹底していなかった者とみるほかはない。」

為替相場の引き上げを主張する理由を湛山は、次のように記している。

  「すなわち、記者が当時金本位制の停止を主張したのは、まったく国内経済の安定を回復するためにほかならなかった。そしてそのさいには、この国内経済の安定をはかるためには、物価の騰貴を必要としたから、すなわち金本位の停止によって為替相場を下げよと論じたのである。したがってこの理論は、当時と逆の事情の発生したさいには、為替相場の引上げを主張して当然だ。そして記者はいまやわが国はまさにその逆の事情に当面していると信ずるものである。」

湛山は、上記からもうかがわれるように、理論的・政策的に最も依拠しているのはケインズである。諸所に、ケインズの理論についての (肯定的) 言及が見られる。何点かを例示しておくと、乗数理論、Loan Expenditure、利子をめぐる自然金利 等である。最後の「自然金利」に関する言及は、流動性選好理論のコンテクストで語られていると思われる。次が関連する箇所である。

「… 金利はいかに人為を加えても、生産力が使い切られた点以下には下げえないということになります。この点における金利を、われわれは自然金利と称えます。それならどうして自然金利の点までは金利が下がるかと申すと、… そこまでは、金利の低下に応じて生産が増加する、したがって資本の蓄積も増加するからであります。」


3.政治評論

湛山は、軍部の軍事的増強や日華事変の展開などについて、それほど批判的な
姿勢をとっているわけではない。むしろ事態の推移においてそれを容認する姿
勢をとっていると言えるであろう。中国大陸への進出を歓迎している風すら見
受けられるからである。
政治については、政党政治を重視するスタンスを堅持している。そしてその視点から、日本の政党政治の堕落ぶりを厳しく批判している。湛山が最も重視しているのは、政党が具体的な政策を明示し、そしてそれをいかに実行するのかを示す、という点である。彼は、議会制民主主義を重視し、何よりも言論の自由の重要性をたえず訴えている。
ところが、そうした行動は政党政治家によって目指されることがなく、それが日本の民主化への重大な障害になった、というのが湛山の認識である。日本の政治家、ことに政党政治家が政治の目的を政権の争奪におき、これがためには手段を選ばずに苛烈な政争を繰り返したことが、日本の民主化を致命的に妨げることになった原因であり、彼らの心構えは根本的に民主的ではなかった、と湛山は評している。湛山は、明治以来の政党の歴史を次のように喝破している。
 そもそも、日本の政党は、それが打倒の対象とした藩閥政治家と同じ基盤から発生しており、板垣退助や大隈重信に代表されるように、薩長閥を倒し政権を獲得することを目的とするものであった。しかも、明治30年ころからは、政党と藩閥とのあいだでの妥協史の様相を見せるとともに、政党間の泥仕合が展開されたことで、政党と議会の権威を失墜させることになった。そして軍縮問題、満州問題などを政争の具に供し、軍部を利用するに至り、政党自らその身を滅ぼし、また国を滅ぼすに至った。当初、政党の政争の具に利用された軍部は、やがて政党を軽視し、踏みにじって自ら政治の主導者たるに至った。湛山はこのように見ている。


4. むすび

湛山は、世界や日本で生じている経済・政治現象についての情報の入手に努めるだけではなく、関連する経済学の書籍についても幅広く読みこなしている。なかでも彼が多大の関心を払い続けたのは、ケインズである。『貨幣論』、『一般理論』などについて、ただ読むだけではなく、1932年には社内に「ケインズ研究会」をつくり、『貨幣論』についての検討を重ねているし、『一般理論』についてはその翻訳をめぐり、読み合わせ会を、多くの経済学者を招き、10数回にわたって開いている。
湛山は、非常に多くの具体的な政策提案を行うとともに、それらを数多くの研究会や講演会を組織して全国的に講演して歩くという行動力・実行力に溢れた稀有の政治経済ジャーナリストであった。「経済倶楽部」の創設、(後に) 金融学会となる学会の創設、さらには英文雑誌『オリエンタル・エコノミスト』の発刊等は、いずれも彼の発案とイニシアティブによるものである。そして何よりも、東洋経済新報社という自由主義的伝統を掲げる組織から、困難なる時代にあるなかで、ここを拠点に自らの政治・経済についての見解を発表し続けたことが、彼にあっては特筆されるべき点である。