2016年3月31日木曜日

シュムペーター The Instability of Capitalism (Economic Journal, Sept. 1928)

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シュムペーター The Instability of Capitalism
(Economic Journal, Sept. 1928)


1.シュムペーター独特のツイストがみられる論文である。要約していえば、資本主義はシステムとして、静態的条件下で安定的、動態的条件下で不安定 (ただし、それは新しい均衡への収束傾向を有する、とされる)。
しかし、ここまでの話では、体制 (order) としては安定している。そのうえで、資本主義は体制としても社会学的理由により、不安定になる (社会主義への移行)ことに、最後で言及がなされている。

換言すれば、資本主義の不安定性は、システムとしては動態的条件下においてみられ (ただし、それでも新たな均衡への収束傾向は認められ、体制としては安定している)、体制としては社会学的理由により生じる、とされる。
 
2.資本主義システムは静態的条件下で安定的、動態的条件下で不安定的であると述べられている。

 1つは、静態的条件下での安定性である。これはワルラスの一般均衡理論などで代表されており(シュムペーターはいわゆるすべての新古典派経済学がこの点で同意している、と述べている。もちろん、マーシャルも含めてである)、そこでは均衡解の存在とその安定性が語られている(均衡解が多数存在する場合や、均衡解の不安定な場合への言及もあるが、それらは例外的なものである、とされる)。
 
もう1つは、動態的条件下での不安定性である。これはシュムペーターの「経済発展理論」の世界である。この場合、システムは不安定的であるが、体制はこの場合でも安定的である、と語られている。

   以上の点を集約して述べているのが、p.69である(重要)。

 3. 資本主義は、社会学的理由により体制 (order) が不安定になることが語られている。シュムペーターはここで、『資本主義・社会主義・民主主義』で論じられることになる考えをほのめかしている。