2017年9月23日土曜日

トランプの外患・内憂 - 外なる金、内なるミュラー

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トランプの外患・内憂 - 外なる金、内なるミュラー

国連総会でのトランプの演説は、みごとなまでの独断的世界観を表明したものであった。
「アメリカを強く」を掲げるも、それは独りよがりであり、結果的にはアメリカを弱く
する内容のものであった。トランプの特徴は、これまでの重要なアメリカの同盟国を、批判し、けっして結束や価値観の共有により、自らをその指導的地位を高めようとするものではなく、まったくの孤立化させ、一国でできることをやる、的スタンスを徹底させるものである。最も重要な友邦であるはずの西欧にたいしては、アメリカばかりが負担金を背負っている的な発言に終始しており、イギリスのメイ、ドイツのメルケルとはまったく価値感も含めてそりが合っていない。とくに地球温暖化問題については、パリ合意からの脱退を表明しており、これはほとんど世界で孤立化した立場である。
 メキシコにたいしては、壁という幼稚な考えを押し付け、その負担をメキシコに要求するというような荒唐無稽な考えを表明してきた(これは、メキシコが拒否しているし、それが合理的な発想である)。オーストラリアの首相とも、けんか腰のやりとりがみられた。
 トランプは、外交、もしくはソフト・パワーが完全に欠落した人物である。それは、外交を本来的に担うはずの国務省の予算が前年の3分の1に激減している点に、あらわれている。そして一番重要な外交的課題を、国務省とは関係のない、娘婿クシュナーがとりしきるという異常な形態になっている(しかもクシュナーは、その特権的地位を利用して自らの不動産ビジネスの場としてもいる、というあきれた状況が展開している)。
 外交交渉は、ひどく神経のおれる、かつ長期にわたる交渉が不可欠の場であるが、トランプ政権にはそうしたことへの対応 - これまでの同盟国にたいし、これまでの大統領とは対照的に、批判するばかりで、けっして共闘・強調的状況を維持・強化するという姿勢を示していない - はまったくできていない。いまでも、大使の決定していない国は数多くあるのが現状である。
 ソフト・パワーの無視にたいし、軍事費の増強意欲は大きい。つまりソフト予算を削減して、それをハード予算の増強に回している感じである。
 国連の演説で、北朝鮮を非難するにとどまらず、北朝鮮の殲滅という可能性についても言及する有様である。
 この点については、金から、トランプを「気の狂ったおいぼれ」と評して、「おれや、北朝鮮を世界の前で侮辱したおいぼれには、歴史的にふさわしいものを提供することを真剣に考えている」と公式に表明している。水爆搭載のミサイルを太平洋に向けて発射する、というものである。緊張は一気に高まっている。
 1つだけの救いは、中国がアメリカの要望に応じて、経済制裁を非常に厳しくすることを決めた点である。これは、北朝鮮にしても、大きな打撃となる措置である。金がどのような行動をとるのか、世界が注目(懸念)している。日本もことによれば、きわめて深刻な事態に陥る可能性がある(防衛省のミサイル迎撃システムは相当に不備の大きいものであることが、ある週刊誌で取り上げられていた)。この水爆は、広島に投下された原爆の10倍以上の威力があるものである。金体制が崩壊しないかぎり、この脅威は去らないし、日本の軍事的な増強も喫緊の問題となっている(とくに核攻撃にたいする防衛能力について)。
今の状況では、日本の安全はまったく守れない。
 トランプの国連演説では、北朝鮮だけではなく、イランとヴェネズエラを特定化して
悪の国、ごろつき国家として、イラン原子力協定の破棄とヴェネズエラへの武力介入を
示唆した。前者は、外交的交渉をまったく無視したトランプ的独断であるし、後者は古い
アメリカ帝国主義的発想である。あそこにある石油資源を自分のもとで奪取することくらいしか念頭にはないように思われる。
 この国際的構図は、他方でイスラエル、サウジをきわめて重要なパートナーとみるトランプの考えを反映している(アメリカは伝統的にそうではあるが、トランプは極端である)。
トランプは、シリアでの空爆やイエメンでのサウジの空爆、さらにはアフガニスタンでの武力増強を実行中である。が、これらは、けっしてアメリカが世界の強国という地位を確実にすることには結びついていない。むしろ、長年ひきずっている、とくにブッシュ以来の軍事的失敗のさらなる継続でしかなく、いつ闘いに勝利するのか、だれにも分からないような状況なのである。
 世界システムの中でアメリカを、トランプがみるのであれば、中国、ロシアの動向に最大の注意が必要なのだが、これについては、トランプには何ら目に見える方針はない。中国にたいしては、トランプは高率の関税を課すというのが公約的政策であったのだが、それは影もみえないほどである。ロシアにたいしては、トランプは長年にわたり、プーチンおよびその取り巻きのオリガルヒとの怪しげなビジネス関係が続いてきており、けっして非難めいたことをトランプは言うことはない。方針など何もないに等しい状況である。

***
特別検察官ミュラーによる、トランプ陣営とロシアのあいだの大統領選挙関係をめぐる調査は、かなりの進行をみせている。つい先日も重大な情報が流れた。それは、昨年のある時期までトランプ陣営の選挙担当責任者であったマナフォートの自宅を、今年の7月にミュラーが家宅捜査をしたが、そのさい、マナフォートには事前に知らせることをせず、捜索令状をもってマナフォートの自宅に行き、ドアを自前で秘密裏にこじ開け、眠っているマナフォートのドアを開けて彼に対面したというもの。そしてそのさいに、ミュラー側は、
マナフォートにたいし、起訴を考えている旨を伝えた、というのである。マナフォートの
活動にはかなり以前から盗聴器が仕掛けられ(ある法律に基づいての合法的措置)、FBI側はマナフォートが海外との連絡や、そして何よりも本年になってからもトランプとの連絡をとっていた様子が盗聴されている可能性が高いのである。
 もしマナフォートが起訴されることになると、トランプにたいする影響はきわめて鮮明なものになることが予想される。ミュラーの捜査はかなりトランプを追い詰めているのである。
 もう1つ、7月に解雇された報道官のスパイサーの「ノート」という問題が浮上している。関係者によると、スパイサーは無類のノート魔で、参加した会議のことは詳細もらさず書きとめる習性があり、そのノートをミュラー側は狙っているという問題である。ミュラー側は証人喚問する権限があるから、スパイサーはそれを無視できない。

 トランプ陣営は、こうした重大な嫌疑にたいし、多くが関与している。そして彼らは自らそのための弁護士を雇用しているのである。この費用はきわめて高く、例えば副大統領のペンスは、それほどの資産家ではないから、そのための資金集めに苦労しているとの報道もみられる。

(娘婿のクシュナーは、ニューヨークでの不動産投資で大きく失敗した件があり、かなりの負債を抱えている。彼はそのため、海外の要人と会っては、その交渉を行ってきている。かなり最近では中国に行ってその交渉を行ったが、失敗に終わっている。外交的に国務長官の上を行くような実質的地位を与えながら、きわめて私的なことに利用している。この点も義父と似ている。ネポティズムの極致であり、ステーツマンとはかけ離れた連中である。)