2017年9月25日月曜日

(メモ) アメリカの現状 -所得格差、ミドル・クラスの衰退


           

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(メモ)

アメリカの現状 -所得格差、ミドル・クラスの衰退

この30年間の「市場原理主義」に駆り立てられた世界は結果として各国で大きな格差をもたらしてきた世界の富に関し1%の超富裕層は残りの99%に等しい(1% vs. 99%) といった標語はすでに日常語化しているアメリカを例にとろうトップ1%の家族が保有する「富」は1982年の20%から毎年上昇を続け2012年には42%に達している2013年においてトップ10%の家族が保有する「富」は (税引き後)で79%になっておりボトム90%の家族は25%でしかないそしてこれは長年にわたり富裕層以外の所得の伸びがきわめて緩慢か停滞状況にあることの結果である (Center on Budget and Policy Priorities (2016) による)
アメリカに見られるこの傾向は、「ミドル・クラスの衰退」としてよく知られている現象である。かつては、快適な住まい、2台の乗用車を有し、そして子供を大学に入れ、恵まれた給与と、確実な年金を保証されている人々 -これがミドル・クラス -が、アメリカ社会・経済の中心的な存在であった。ところが、この30年のあいだに、こうしたミドル・クラスが著しい衰退状態に陥ってしまっているのである。
 わが国とは異なり、アメリカ経済は90年代に大きな復興を遂げ、GDPで言えば、その伸びは著しいものがあったことを、もう1つ念頭に入れておく必要がある。ただ、これがもたらされたのは、第1に、伝統的な重厚長大産業の顕著な没落とIT産業に代表される新たな産業(そしてこれらは、グローバリゼーションの波に乗って、海外の安価な労働力を利用して製造を行う方式をとった)によるものである。そのため、アメリカの広大な地域が経済的に衰退していったのである。第2に、同じく、グローバリゼーション、それも金融グローバリゼーションがアメリカ経済を大きく牽引したことによる。これらの結果、アメリカ経済は大きく伸びたのだが、それは一部の金融資本家やIT産業家による享受することとなった。他方、勤労者は、長年にわたり賃金の停滞を被るとともに、かつてと異なり、労働組合は悲惨なまでに衰退をみることになってしまっている。
 こうした動向が、実際にそれまでのミドル・クラスに属していた人々をどのように襲うことになったのかは、多くのドキュメンタリーが語るところである。多くの人々が解雇され、不安定な賃金のもとですごすなか、かつてと異なり、夫婦共稼ぎでも収支を維持するのが大変という状況が一般化している。そして、アメリカン・ドリームの象徴である住宅について、住宅ローンの返済に困難をきたす人々の数が増大する状況が続いている。さらに30年前と異なる深刻な問題がある。それは子供を大学に進学させるために必要な資金が極端に上昇していることである。かつては州立大学に入るのは、普通の家庭でもほとんど資金的に問題がなかったのだが、いまではまったく異なっている。そのため、若者は教育ローンを組むことを余儀なくされているが、これが金融のわなにはまったままの状況が続いている。政府は教育ローンに苦しむ若者をまったく救済することは、行ってきていないのである。
もう1つ、ふしぎな現象がみられる。ある調査によると、アメリカ人の40%は緊急時に2000ドル (20万円) を用意できないのである。アメリカ人の大多数は貯蓄がほとんどできないどころか、マイナスにすらなっている、という。
 こうした基本的問題に加えて、人種的問題がある。黒人やヒスパニック系の人々は、白人に比べると、顕著に不利な状況におかれている。しかも、白人自体、上記の現象のなかで取り残されてしまった人々が多く存在し、彼らは、現在の政治システムにきわめて不満をもっていることが知られている。今回、トランプという異様とも言える性格の人物が、これらの人々を味方に付けることに、少なからず成功しているというのは、なんとも言えない現象である。金にたいして目がないのは、トランプもヒラリーも変わるたところがないのだが、トランプの特異な体制批判は不満を覚える白人層を欺くかたちで引きつけているという側面があることは、否定できない。