2016年1月25日月曜日

1つの思考実験 - 中銀の特性 (覚書)





 1つの思考実験 - 中銀の特性(覚書)

中銀は国債を無期限に保有することも、あるいは (理論上は、であって現実的ではないが) シュレッダーで廃棄することも可能である。通常の銀行が保有する場合は、国債保有からの利子収入、償還による元本の回収は重要な問題であるが、中銀はそうではない。いつでも自ら刷ったり、数値を書き込むことができる機関だからである。
中銀が国債を買い入れるさいに支払う資金は中銀の負債であるが、これは中銀がいくらでも刷ること、あるいは銀行の当座勘定に数値を書き入れること、が可能である。そして政府と中銀は、結局のところ1つの政府であり、その中での貸借関係は(いわば親子のあいだの貸借関係と同じであるから)、お互いが納得すれば清算することができ、しかもそれは外部 (銀行などが保有している国債) に影響を与えることはない(家計の場合とは異なり、このようなことが許されることはないのだが、理論上はそうである)。
だが、中銀は保有する国債を満期までもち続けることは、何ら問題なく実行できる。何よりも、中銀は無制限に債務(マネー)を発行する権限が与えられており、通常の企業とは異なり、赤字倒産とは無縁の存在である。
 それに、中銀は保有する国債を市場に売却する必要性もない。いや、無理に売却すると、国債価格の暴落、つまり利回りの高騰を引き起こす危険性があり、それは国の予算編成に著しい問題を引き起こすことになるが、中銀が保有国債を売却する必要性は、どこにもないのである。
 これまでも中央銀行が買いオペにより国債を購入するということはあったが、取扱金額は小さいものであった。そして何よりも物価の安定を図ることを目的として、利子率政策を実行することが中銀の中枢的な業務であった。
それがいまのQQEの場合、極端な規模になっており、かつそれが、いまや金融政策の中枢に据えられている。非伝統的政策が常態化すると、中央銀行は、貨幣発行を通じて、何でもありの行動を経済に対してとることが可能となる。あらゆる種類の債権(それは国債だけではなく、MBS [アメリカのLSAPではこちらの方が重要な対象であった]、信用ローンなどの民間債権も含む)、さらに株式に至るまで、無制限に購入することが可能である。さらに国債の直接引き受け (財政ファイナンス) も理論的には可能である (財政法第5条で禁じられているが、それは立法上の問題)