「その場合、生じうる最良のことは、双子は永遠の眠りについて二度と人類の法廷や市場に登場してこないことだ」 *** 1946年3月9日、サヴァンナで行われた基金および世銀の理事の就任式で行ったケインズのスピーチは、想像以上に皮肉を加えたものになっている。「眠れる森の美女」を引き合いに出しながら、ケインズの本音がオブラートされたかたちで表現されている大変意味深長なスピーチである。 ひどくまずい命名になっています。双子の名前は逆にすべきであったという見解をずっと持ち続けると思います。 つまり、「基金」は本来は銀行と呼ばれるべきであったし、「銀行」は基金と呼ばれるべきであった、ということである。「国際通貨基金」は(例えば)「国際通貨銀行」、「国際復興開発銀行」は(例えば)「国際復興開発基金」と呼ばれるべきであったというような意味であろう。この論調は、ケインズが「共同声明」を絶賛していた1944年5月頃の発言 (本稿第1節を参照) と大きく異なっている。 そしてこの命名に (魔法使いでなく) 妖精が現れて、双子に贈り物をもってくるだろう、という話になる。第1の妖精は豪華な衣服をプレゼントし、全世界のため、公共善につくすよう双子に願う。だが、清い言葉はこれまで守られたためしがなく、特定のグループの道具に化す危険性が高い。真に国際的な特性を維持するようにあらゆる努力がなされねばならない。 第2の妖精はあらゆる種類のビタミン剤をもってくることであろう。双子は青ざめて虚弱な顔つきをしている。エネルギーと恐れを知らないスピリットが必要であり、それがビタミン剤である。 第3の妖精は、子供たちの唇に手を当てて封じ、そしてそれを再び開ける行為を施す。それにより知恵、忍耐、思慮深さのスピリットが呼び起こされることになる。 これらにより、双子は成長して偏見やエコひいきのない客観的で普遍的な対処をしていくことで、世界の信頼を勝ち得ることであろう。 このように述べた後、ケインズは次のように釘を指している。悪意のある妖精がいないことを願う。だが、いた場合は、ひどい呪いの言葉を発することであろう。 子どもたちは政治家として成長しなさい。すべての考えや行動は腹のうちに秘めなさい。決めたすべてのことはそれ自身やそのメリットのためにではなく、何か他のことのためになしなさい。 その場合、生じうる最良のことは、双子は永遠の眠りについて二度と人類の法廷や市場に登場してこないことだ、と。 |