Hayek, Two
Types of Mind, 1975
平井俊顕
科学的思考には2つのタイプが存在する。1つはメモリー・タイプ であり、もう1つは
パズラー (puzzlerもしくはmuddler)と呼べるものである。
メモリー・タイプとしてヴァイナー、シュムペーター、ベーム-バヴェルク、ラッセルを、またパズラーとしてナイト、ヴィーザー、ホワイトヘッドそれにハイエクが挙げられているのが面白い。
メモリー・タイプ: 自らの概念のみならず、過去や現在の他の理論を包摂する全体を知っており、即座に解答のできるような大家
パズラー:合成写真のぼんやりしたアウトラインに似ている。独立した思想への前提条件である混乱した頭脳状態を有する人。
2つのタイプが存在するというのが真実である場合、現在の大学教育システム(試験制度)は、パズラーを排除するかたちになっているので好ましくない。
このコースを選択した(とくに理論的な仕事)者に必要な生活(住居、食事、十分な書籍代)が提供されるような取り決めがあるのが望ましい。そして快楽を数年間犠牲にして、選択した科目の研究に専念する機会を与える。
非常に厳格な生活を送り、快楽は犠牲にされる生活、こうした生活を用意することの重要性。それを体験してきた人は試験制度による方式に成功してきた人よりも尊敬されるのは当然であろう。
こうした制度の確立により、学術社会の重要な構成要員を育てることができ、試験制度を通ってきた人々、すなわち慣れた轍のなかで動く神聖なる公式の支配にたいするセーフガードにもなるであろう。
バーリンの「はりねずみと狐」との類似性にハイエクは言及している(p.50の脚注)。ここではりねずみは1つの大きなことを知っているものとして、また狐は多くのことを知っているものとして比喩されている。