2017年1月8日日曜日

イラク戦争 by T.H.





イラク戦争  by T.H.

続いて、2003年、ブッシュは、「大量破壊兵器保有」を根拠にイラ
ク戦争を仕掛けた - ブレアもそれに加担した。
フセイン政権はすぐに打倒され、フセインは逮捕、そして2006年に処刑された。
イラクが大量破壊兵器を保有していなことは、当時の調査機関の報
告でも明らかにされていたことであるが、ブッシュ政権はそうした
ことにたいし、イギリスのある学術論文からのコピペ用で応じると
いう信じられないことを行ったことが今日、『チルコット調査報告』
により明らかになっている。
 イラクが大量破壊兵器を保有していなかったことは、アメリカの
イラク征服後の調査によっても明らかになっている。つまり、理由
は何でもいいから、イラクを自らの征服下におくことが政権の大き
な目的であった。
 ブッシュ政権がイラク戦争を起こすために行った数々のでっち上
げを列挙するとつぎのようになる。 (1)「フセインとアルカイーダ
は親密な関係にあるイラクはWMD [Weapons of Mass
Destruction] を実施している」などの根拠のない主張、(2) フセイン
側の側近をCIAがとらえ、そして最も残酷で知られていたエジプト
の監獄での拷問により嘘の証言をさせるに至った、(3) プラハで9.11
実行の主犯がフセイン側近と会談をしていたとのうその証言を用意
した、(4) アルミニウムの購入は核爆弾製造のため、とする嘘、(5)
ジェールからのイエローパウダーの大量購入(核爆弾の材料だと
いううそ)
さらに、つねにそうなのだが、こうしたアメリカの他国侵略の大き
な動機は石油資源の確保、しかも政権担当者も含めての私的利権の
確保にある。イラク戦争もその例にもれず、副大統領チェイニーに
よるイラク石油資源の収奪を1つの有力な動機としてなされたもの
であることは疑いのないところである。
 フセインはスンニ派を重用し、シーア派には弾圧を加える政策を
とっていたから、アメリカの勝利は、必然的に、シーア派を重用し、
彼らによる支配体制をとることになった。スンニ派は弾圧される側
になり、イラクの軍隊は解体され、公職から追放される身となった
のである。
 このことがその後のイラクの政治情勢の不安化の重要な契機とな
った。シーア派とスンニ派とのあいだの激しい争いが生じることに
なり、イラクの治安は極度に悪化していくことになった。結果的に
は、そのこととイスラム国の成立とは大きな関係がある。イスラム
国はスンニ派であり、イラクのスンニ派の支持を受けながら活動を
するなか、「アラブの春」がシリアを襲ったことで生じた混乱のなか、
イラクの元軍人(スンニ派)も参加するなか、急速な勢力をシリア、
イラク一帯にもつことになったのである。当初、イスラム国はアル
カイーダに忠誠を誓っていたが、すぐに独立した行動をとるに至り、
現在に及んでいる。
  こうしたなかでサウジの動きは、不穏を煽るものであった。シリアはサウジにとって敵であったから、アサド体制を打倒する勢力に武器を提供することは、自らの支配力の拡大になると考えていた。サウジはスンニ派の過激組織にたいし、巨額の資金提供を行うことをいまもやめていない。いまそのことに関連した立法化 (9.11事件の犠牲者家族がサウジを提訴する権利を認める法)がアメリカで進められている(両院は通過しているが、オバマは拒否権を発動すると言われている)。これを阻止するためにサウジは、もしこれが通れば、保有する巨額のアメリカ資産を売却するという脅し (一種の経済的威嚇) ― もう1つの経済的威嚇は、アメリカが多用している「経済的制裁」である をかけている。