2018年3月22日木曜日

アメリカの想像を超えた危機

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アメリカの想像を超えた危機

アメリカはいま想像を超えた危機に曝されている。

その筆頭はトランプという人物が大統領になったことである。
現在、彼をめぐっては3つの問題が彼を襲っている。

1. 特別検察官ミュラーによる、2016年の大統領選挙をめぐるロシアによる選挙干渉とそれとトランプ・チームが共謀した嫌疑をめぐる広範囲にわたる調査が、トランプ本丸にまで迫っているという事態である。
  いまトランプはこれにたいし、さまざまな妨害工作を行ってきたが、ついにミュラー自身への個人攻撃をツィッターで始めるに至った。トランプがミュラーを解雇する措置をとったとき、政界全体がそれにどう対応するかという問題である。大統領弾劾あるいは司法妨害という方向に向かうのかという点が、重大な争点となっている。いまの政党、とりわけ共和党が理念を放棄してトランプに追従している姿勢をとっていることが、最大の問題であるが、それに加えて、いまでもトランプがキャンペイン的アジ演説をすることに、ベースの人々が歓喜している姿が見られる点が、憂慮される点である。

2. ポルノ女優ストーミー・ダニエルズが、10年前に半年続いたトランプとの関係について洗いざらい話すことを決めたという問題である。争点は、2016年にトランプ陣営がストーミーにたいし、沈黙を守ることを条件に口止め料を支払い、その文面にサインさせたという点にある。これについて、トランプの弁護士は、「トランプは何も知らない、関知していない。私が自分の家を担保に支払い料を調達した」としらじらしいウソをついている。この同意書は公表されているが、トランプのサインはなく、かつそこに記されている名前は仮の名 (a.k.a.) になっている。こうした同意書を弁護士が勝手に書くなどということはど素人にもおかしい話であるが、これがトランプのフェイクの世界である。
 ストーミーはCNNの60分番組で洗いざらいを話すことにし、そしてその録音は終わっている。これにたいしトランプは、20億ドルの損害賠償裁判を起こす、と脅しをかけてきている。ストーミーの弁護士の論理と話しぶりは、予想していたのとは異なり、きわめて自信に満ちた落ち着きのある印象である。トランプ側はストーミーにたいし、絶えず脅しをかけ続けている。彼は本質的にThug である、とはトランプの伝記を書いているジャーナリストが異口同音に語っている (有名なのはジョンストン)。CNNの放送は3月25日に迫っている。ものすごい視聴率になることであろう。
  そうこうしているうちに、3名の女性が同様の問題で提訴に踏み切ろうとしていることが本日、報道されている。この裁判の行方は、トランプを終わらせる可能性もあると言われている。

3. つい最近生じたもう1つの問題、これはCambridge Analytica という会社が、フェイスブックを利用して膨大な個人データを取り出し、それをもとにしてトランプ側と契約し、自らの心理的ツールを利用して、膨大な選挙民の心理を分析し、それを覆すような操作をしていた(もちろんそれによって膨大な報酬を受け取るわけである)ということが、イギリスのメディアによって暴露され、またその内実がウィッスルブローアーにより赤裸々に語られるに至ったということである。この話はインターネットの今後のあり方に深刻な問題を提起するものになることは必至である。便利なアプリを個々人は個人的に利用し、そしていわゆるフレンドとの接触を増やす中で、膨大なネットワークが構築されるに至っている。それを悪用して、膨大な個人データを取り出し、そしてそれを分析アプリで解析し、個々人がどのような政治傾向をもっているのかなどを調べ、そしてそれを変える方向に運動を進める、ということが現実化しているという問題である。いまのところ、その第1号がトランプ陣営がこの会社に深くコミットしていたこと、これが新たに問題となっている。

トランプ政権は、いまや完全に崩壊状態になっている。自分の気に入らないものの首をきることを繰り返してきた結果、政権は実体をもたないものになってしまっている。いまではトランプが怒りに任せて決めたことはすべてそのまま大統領命令となり、それを少しでも抑止できる人物は姿を消してしまっている。トランプが頼りにしているのは、ツイッターにより、直接大衆に語りかけるという手段(その内容は嘘八百に満ちたものである。通常の世界では1つのウソでも名誉棄損になるようなウソだが、いまのアメリカではそれがまかり通っている。トランプのツイッターを禁止できないでいる)、および選挙演説中と同じ形式の独演会をとりまく人々の存在(これらの人々はすでに判断ができなくなっている)
、そしてその状況にたいし理念のかけらもなげうってしまっている共和党幹部、もう1つはトランプに膨大な資金を出している大金持ち(もちろん、出した資金の数倍の見返りを前提としてである)ということになる。

 トランプが孤立化しているということとともに、トランプ政権が内部分裂しているということも指摘すべき点である。その典型は、イギリスでの神経ガスによる元ロシア・スパイの暗殺未遂事件にたいし、トランプをのぞくトランプ閣僚は、ロシアの行動をかなり明確に批判し、イギリス側の支援を表明しているのだが、トランプは一切、何も表明していない。ましてツイッターで一言もしゃべっていない。さらに、今回のプーチンの大統領4選にたいし、トランプへのアドバイザーは、ブリーフィングにおいて、「No Congratulation!」
と勧告したのだが、トランプはそれを無視し、祝福のコールを出している。議会は、さらに「ロシアがアメリカのインフラ、たとえば電力発電所のオン・オフ機能をハッキングしており、いつでも電力をストップできる状態になっている」としてロシアを非難しているにもかかわらず、それらについてトランプは何も語らない、という状況になっている。プーチンからすれば、トランプのおかげで、アメリカは益々内部分裂を引き起こしているし、このままさらにもっといろいろと妨害工作、スパイ工作を進めることができる、というまことにめでたい状況が現出している。ここまでの卑屈な態度だが、これはモスクワでのミスユニバースのさいに、さまざまなかたちでハニー・トラップにからめとられたことに根源がある、とはよく言われていることである(実際に、数年前にこのことは、いわゆるゴールド・シャワーとして報道されている)。