(覚書) プラトン『国家』 1. ソクラテスとその仲間のあいだの対話。生き生きとした会話体。ソクラテスの非常な論理力。仲間は (当初、例えばトラシュマコスのように、かなり反論する場面もあるが)、それに基本的には相槌を打つ役。 2. イデア (実相) 論はこの長い対話 (dialogue) のなかで2箇所に登場する。多くの寝椅子があるが、それにたいして (真実在) の寝椅子はただ1つのみ。それは不変である。それは見ることはできないが、思惟によりその存在を認識することができる。愛知者は、「それぞれのもの自体を ― 恒常普遍に同一のあり方を保つものを ― 獲得する人たち」 のことである。 3. 3種類の寝椅子。本性 (実在) 界にある寝椅子。大工の作品としての寝椅子。画家の作品としての寝椅子。プラトンは最後のものを、詩のなかで真似る機能をもつものとして否定した。この点で、ホメロスをかなり批判している。 4. プラトンの論理はすべてが論理的というわけではない。かなり無理のある論理も少なからずある。それは相手の相槌によって、読者にたいし、快くプラトンの話術に誘い込んでいく、という効果を有していることもしばしば見受けられる。 5. 哲学呈な対話・問答の重要性。「本曲」としての哲学的問答法。 6.プラトンは、国家を1人の状態から次第にいろいろな職種の人間を加えていくというかたちで増やしていく。そこでは一種の分業のようなことが当然視され、1人の人間は1つの職種に専念することが良い、というかたちで構想されていく。 7.プラトンは数について、その重要性を実在との関係で捉えている。それは、「実在の観想へと魂を向け変えて導いていくようなものに属する」。 8. それ以外にも、プラトンはかなりピタゴラス学派の影響を受けており、あやしげな議論を展開している。 9. 国家を5つのタイプ (理想国家、名誉支配制、寡頭制国家、民主制国家、僭主独裁制国家) にわけ、この順で悪くなってくる、と評価する。そしてそれに対応して、それぞれに対応する人間を同様のかたちで評価する。さらにその頭脳のなかを、魂の3区分 (学びを愛する部分、名誉を愛する部分、金銭を愛する部分) により説明している。プラトンは金銭を愛する部分を最も軽蔑的に見ている。 民主制国家がけっして評価が高くない点が面白い。衆愚政治ということに関連していると思われる。 10. 理想国家 は哲人王国家であり、そこでは共産制、女も共有、そして必要最低限のものしか受け取らないで生活する。さらにはそれらの種族を育てる教育のこと。体育と音楽 (ただし、感情を抑制したもののみ)の重視、数学の重視。激しい教育のなかからそれに耐え抜いた者を王に選ぶべし。 (なぜ、英語では『国家』がRepublicと訳されるのだろうか。「哲人王国家」は共和制ではあるまいに。) 11. 最後に登場する「エルの物語」は、地獄と天国の輪廻転生のような観のする摩訶不思議な雰囲気の話である。 12.「善」のイデアの重要性と説明の難しさ。 13.「正義」とは何か。 主題とも言うべき上記2点についての説明は、皮肉なことに一番分かりにくい。善とは何か、正義とは何なのか。 哲人王国家の実現されている状態が「正義」のようであり、そしてそれに対応した個人、そしてそれに対応した魂の状態が「正義」と言っているように思えるが。 14. 魂の不死 15. 面白いたとえ話。 洞窟につながれた囚人の話。後ろから光が射す。 |