シュムペーター「資本主義の不安定性」(1928年) 1. シュムペーター独特のツイストがみられる論文である。要約していえば、資本主義はシステムとして、静態的条件下で安定的、動態的条件下で不安定 (ただし、それは新しい均衡への収束傾向を有する、とされる) である。 しかし、ここまでの話では、体制 (order) としては安定している。そのうえで、資本主義は体制としても社会学的理由により不安定になる (社会主義への移行)ことが、最後で言及されている。 換言すれば、資本主義の不安定性は、システムとしては動態的条件下においてみられ (ただし、それでも新たな均衡への収束傾向は認められ、体制としては安定している)、体制としては社会学的理由により生じる、とされる。 2. 資本主義システムは静態的条件下で安定的、動態的条件下で不安定的であると述べられている。 1つは、静態的条件下での安定性である。これはワルラスの一般均衡理論などで代表されており (シュムペーターはいわゆるすべての新古典派経済学がこの点で同意している、と述べている。マーシャルも含めて、である)、そこでは均衡解の存在とその安定性が語られている (均衡解が多数存在する場合や、均衡解の不安定な場合への言及もあるが、それらは例外的なものである、とされる)。これは『理論経済学の本質と主要内容』の世界である。 もう1つは、動態的条件下での不安定性である。これはシュムペーターの『経済発展の理論』の世界である。この場合、システムは不安定的であるが、体制としてはこの場合でも安定的である、と語られている。 3. 資本主義は、社会学的理由により体制 (order) が不安定になることが語られている。シュムペーターはここで、『資本主義・社会主義・民主主義』で論じられることになる考えをほのめかしている。 |