2016年8月11日木曜日

Knight, Historical and Theoretical Issues in the Problem of Modern Capitalism, 1928 by 平井俊顕



Knight, Historical and Theoretical Issues in the Problem of Modern Capitalism, 1928

by 平井俊顕

  ゾンバルトの著作『高度資本主義』をめぐる書評的論文である。全般的にゾンバルトは経済の理論が分かっていないという色調で書かれている。

 「・・・理論家 (ナイト) から見ての『現代資本主義』の最も顕著な特徴は、競争的経済機構の基本的なメカニズムについて著者が理解していないという点である」 (p.134)

  この観点で示されている見解は、ナイトの考えを知るうえで貴重である。
                                    
競争の機能は、本質的に経済的関係についての非 - 人間的、準機械的コントロールを
もたらす点にあることを、資本主義の批判者ゾンバルトは理解していない、とナイトは論じている。

 「非個人的な競争は、つまりは圧倒的に支配的であるというのは、明らかである」 (p.136)
 
資本主義の精神とは個人間のバーゲニングの精神であるというゾンバルトの考えにナイ
トは批判的である。

「現実の資本主義では、相対的にほとんどバーゲニングはないし、さらに有効な競争下においてはそれは皆無である」 (p.136)

「労働全収権」論にたいしナイトは批判的である。

ゾンバルトはセイ法則を承認しているが、それは誤りである、とナイトは述べている (よ
うに思われる)。 (p.135)

 ゾンバルトの限界原理をめぐる論述についてナイトはp.137-138で言及している。

初版に比べて力点の変化のあることが指摘されている。文化的強調から機械的強調への移
動がみられる、と。

ナイトは資本主義精神 (ウェーバーやゾンバルトによって展開された) をきわめて重要
なものとみている。とりわけウェーバーにたいするナイトの尊敬の念は極めて高い。
(p. 143)

「資本主義精神は、現代経済史、いや現代史全般の、最も重要な事実であることは、
疑いのないところである」
 
ウェーバー、ゾンバルトの理論にたいし破壊的批判を展開しているブレンターノ、さらに  セー、トーニーを、ナイトは検討の対象にしている。

最後にいくつかの論点が要約的に示されている。

  (1) 歴史家は資本主義システムを正しくとらえていない。
  
(2) 資本主義の精神を、バーゲニングと征服で語ることはおかしい。それは本末転倒である。
                     
次のコメントもナイトの社会哲学を理解するうえで注目に値するものである。

 「われわれは資本主義を弁護しない。それに資本主義には倫理的なものは実際には存在しない、と主張してきた。が、資本主義はまた建設的でもあったのである。」 (p.144)