ホワイト案 平井俊顕 10月5日付のウィリアム・イーディ (大蔵省次官) 宛書簡 - 当然のことではあるが、ケインズは、イーディおよびドールトンとは頻繁な連絡を取り合っている。当地で生じている状況および大蔵省からの指令やアドバイス、そしてそれぞれの見解の表明などが、書簡や電信などを通じて行われている ― において、ケインズは、ホワイトがどのような構想を有していたのかを、検討している。それは何らかの正式の案としては取り上げられてはいなかったものである。ホワイト案はほぼ次のような構想をもっている。 イギリスの抱える金融問題に対処するホワイト案は、3つの項目で構成されている。 第1は、スターリング・残高問題対策である。これは1945年6月30日現在でのスターリング圏諸国がもつ対イギリス残高110億ドルを3つの方法で処理しようとするものである ― (i) 20億ドルは使用を自由化する。(ii) 40億ドルは棒引きにする。(iii) 50億ドルは基金とし、それは無利子で、ある期間にわたって返済されるものとする。 このうち (iii) については、アメリカが 3%で割り引いた価値である25億ポンドで買い取る。したがって、イギリスはアメリカに25億ドルの債務を負うことになる。 第2は、イギリスの貿易収支の赤字対策である。アメリカはこのために、30億ドルの無利子ローンを貸与する。 第3は、1946年12月31日までのスターリング残高を処理するため、残る18カ月間に生じる残高を処理に関するものである。このためスターリング圏諸国は、20億ドルを基金化し、それをある期間、無利子での返済とする、という措置をとる。 この結果、イギリスはアメリカに対し、計50億ドル (25億ドル+30億ドル)、スターリング圏諸国に対し、計40億ドル (20 億ドル+20億ドル) の債務を負うことになる。 ケインズはこうした検討を通じ、ホワイト案が非常に寛大な方針で考案されており、しかもそれは非常に関係者を説得しやすい論理を内包している、として高く評価している。 10月12日付のイーディ宛書簡で、ケインズは交渉の状況を説明したり、アメリカの上院、下院議員とのコンタクトや彼らの多くがイギリスに対し非常に同調的である様子などを報告しているが、最も興味深いのは、ホワイト案がきわめてすぐれたアイデアを有するものであり、重要な役割を演じることになるかもしれないこと、そしてブランドやロビンズが非常にホワイト案を称賛していること、が記されている点である。 |