2017年10月27日金曜日

トップ・コミティ (U.S. – U.K. Financial and Economic Negotiations Top Committee) 平井俊顕


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トップ・コミティ (U.S. – U.K. Financial and Economic Negotiations Top Committee)

平井俊顕

英米の金融・経済交渉は、「トップ・コミティ」と命名された委員会ですべてが決定されることになった。この委員会は都合5回にわたって開催されているが、最初の3回 (委員長はクレイトン) は、基本的にイギリス側の現在、および直近に生じる財政的・金融的状況、およびイギリス側がそれに対処すべく勘案している案を、アメリカ側に説明するためのものであった。基本的には、すでに見たケインズの考案に沿っての説明であるため、詳細には触れず、ここでは注目すべきケインズの発言2点に言及しておきたい。
1点は、スターリング圏内の諸国 ― とりわけケインズが懸念しているのは、インド、エジプト、パレスティナ、アイルランド ― が保有するスターリング残高に対し、一律の基準で臨むのは合理的ではない、という点である。その理由として、イギリスが購入した物資の価格付けや、スターリング残高の個人保有者の割合の相違などが、指摘されている。
もう1点は、イギリスの「投資の引き揚げ」(disinvestment) 問題である。ケインズは、この点について、イギリスはこれまで海外に保有する多くの国債、公共施設、資産を売却してきている、確かにイギリスはまだ産業、鉱山、プランテーションなどの株式を保有しているが、これらの売却は貿易外所得を減少させることで、イギリスの全般的状況を弱体化させることになるので、売却はしかねる、という旨の発言をしている。クレイトンはこれにたいし、アメリカ国民の感情はそれを許さない状況にある旨の発言をしている。

トップ・コミティの第4回目の会議 (9月19日. 委員長はヴィンソン) において、ケインズはイギリス側の案として2つの代替案を提示している。
第1案は、アメリカからの援助は最小に抑えるもので、「イギリスが購入する物資の金融のために、スターリング圏内で開発されたシステムと圏外の諸国とのあいだで開発された支払い協定 (payments agreements)」の継続である。
第2案は経常取引に関するかぎりスターリング圏システム内の差別的要素の完全なる撤廃」であるこの案では「スターリング圏が新たに稼ぐすべては世界のいかなる箇所での経常取引を金融するために自由に利用することができる・・・同様のことは蓄積されたスターリング残高のうち自由にされたいかなる部分にも適用されるこうしてスターリング圏ドル・プールは廃止されることになるなおケインズはこの箇所でスターリング圏でスターリング残高を保有する諸国にたいし相応分の自発的な棒引き (writing-off) に言及している
トップ・コミティの第5回目の会議 (9月20日. 委員長はヴィンソン) においては、イギリスがアメリカから期待する援助が、重要なテーマになっている。これは、第4回目の会議がスターリング圏を中心に扱っていたことに対応するものである。
 ケインズが提案している援助額は、下記の3項目で構成されている。

(a) イギリスの貿易収支赤字に対処するのに必要な額
(b) スターリング残高に対処するのに必要とされる額
(c) レンド・リースおよび相互援助の清算の結果と、イギリスがアメリカに支
払う必要のあるネットの額

ケインズは、これらを合計した額は、向こう3-5年間で総計50億ドルになる、と述べている。この会議では、この援助の条件については、両者ともに言及はなかった。
 9月21日付で、ケインズは蔵相ドールトンに、状況報告を認めている。このなかに、ワシントンに滞在中のカナダの大臣が、ブラントに次のような話をしていることが記されている。すなわち、クレイトンはコミティのアメリカ側の委員は、5回の会議に非常に満足しているが、議会が同様に説得されるかは別の問題である、と。また、大統領は、アメリカからの援助に対するすべての申請者の要請の全リストを要求しており、それが判明するまでは決定はしない、と述べていることも、伝えられている。