順調な滑り出しとなった交渉 平井俊顕 トップ・コミティは、イギリス側の考えをアメリカ側に伝えるための機会であったが、これを受けて、両者のあいだの本格的な交渉が開始された。 アメリカ側はイギリス側の説明を好意的に受け止めており、交渉は順調な滑り出しとなった。 9月20日にケインズは、クローリーとレンド・リースをめぐり話し合っている。レンド・リースの最終的な清算額についての議論の継続、ならびに最終的な清算は現金になるかもしれないし、2 3/8%の利子での30年ローンになるかもしれないし、あるいは交渉によって同意された総清算額の部分になるかもしれない、などが話し合われた。 9月26日、ケインズとハリファックス卿は、クレイトンとヴィンソンとの話し合いをもった。アメリカ側は、スターリング圏の自由化およびスターリング残高の削減を唱えるイギリス案を受け入れる姿勢をみせた。ただ、過去の犠牲という論点の強調ではなく、国際貿易を自由化することのもつ利点が - とりわけ議会との関連でも - 強調されるべきである、とアメリカ側は論じている。両者とも必要な支援額について50億ドルあたりで一致していたが、アメリカ側は、無償援助は論外であり利付ローンが受け入れられる形態であろう、と述べていた。 ただ、ケインズとハリファックス卿は、財務省と国務省は無利子のローンで考えている可能性がある、と見込んでいた。 ケインズは ケインズは6つの代替案を提示している。いずれも50億ドルで考えられている。 (i) 無償援助20億ドル +30億ドルの無利子ローン (ii) 無償援助 20億ドル + 30億ドルの50年ローン (利子は2 %) (iii) 50年ローン (無利子) (iv) 10年間 (v) 最初の10年間は無利子、その後は2%のローン (vi) 最初の10年間は無利子で ケインズは、(ii) と(iii) が好ましいが、それに次ぐのは、(v) である、と述べている。 9月27日、ケインズとハリファックス卿は、クレイトンとヴィンソンとの話し合いを続けたが、ケインズの印象は、アメリカ側は50億ドルの援助 (贈与) は俎上においていないが、無利子での50億ドルのローンはありうる、というものであった。ケインズは、そこで、年1億ドルでの債務元利払いの打診をしてもよいかをロンドンに求めている。 10月1日、ケインズはロンドンと連絡をとっている。そのさい、50年で2%の利子 によるローンは可能かもしれないが、贈与は不可能であろう、と述べている。そのうえで、返済を開始する猶予を10年間有する無利子でのローンの可能性を探る許可を求めている。ケインズはまた、特恵関税の削除が、アメリカからのいかなる援助であれ、その条件になるかもしれないと考えている。 同日付でケインズは蔵相ドールトン宛に手紙を認めている。そこでは、アメリカ側が非常に好意的な対応を示していることが語られている。さらに10月2日付の大蔵省宛の手紙で、ケインズはレンド・リースの清算についての見込みを述べている。その内訳は、アメリカ側が考えている額が7.5~10億ドル、これに対しイギリス側が保有している額が5億ドルであり、その差額がイギリス側の負債となる、というものであった。 10月4日付けのドールトン宛書簡で、ケインズは、無利子での50年ローン (上記 の (iii) |